
トランプ大統領のTwitter発端とした米国株の調整から2週間経ちました.米中貿易戦争はどんどんエスカレートしてきている感があり,ファーウェイ製品の締め出し,Googleがファーウェイ向けサポートを停止するなどの発表がされています.
そんななか,今回の調整でVIX先物の建玉数がどれくらい減少したのでしょうか.投機筋のVIXショートが解消していないなら何かの拍子に大きな下落があるリスクがあるだろうし,解消されているなら大きな下落のリスクは低いといえます.
ということで,5/14時点のVIX先物の建玉数を確認したいと思います.
最新のVIX先物建玉の記事はこちら.
Commitments of Traders (COT) レポート
Commitments of Traders (COT) レポートは,米商品先物取引委員会(CFTC)によって,各上場商品の建玉明細を公表するように義務付けられている,市場参加者別の建玉報告書です.なお,CFTCは米国内の株価指数先物や通貨先物などの取引を監視する権限を持つ政府機関です.
COTレポートにはいくつか種類があり,Legacyレポートは Commercial と Non-commercial の2つに部類され,Traders in Financial Futures (TFF)レポートは金融商品である通貨や,債券,株式,VIXなどを4つに分類されます.COTレポートは現地時間の毎週火曜日での建玉数をその週の金曜の午後に発表されます.
Legacy レポートの分類は次のように考えられます.
- Commercial: 実需の投資家,現物業者など
- Noncommercial: 大口投機家,ファンド
- Nonreportable: 非報告建玉(小口の投機家)
出典 Commitments of Traders
出典 Explanatory Notes
また,TFF レポートの分類は次のように解釈できます.
- Dealer: 市場の仲介・売り方 (sell side).大手銀行や証券ディーラーなど.
- Asset Manager: 機関投資家.年金ファンド,投資信託,保険会社など.
- Leveraged Funds: ヘッジファンド.大口の投機家.
- Other Reportable: 上記以外の報告義務のあるトレーダー.企業の中央銀行,小規模な銀行など.
- Non Reportable: 非報告建玉.小口の投機家
参考(PDF) TRADERS IN FINANCIAL FUTURES Explanatory Notes
なお,Dealer は仲介なので,その他のカテゴリの参加者の逆のポジションを主に持つことになります.
VIX先物建玉数(2019/5/14)
まずはVIX先物建玉数を確認します.
直近では4月半ばをピークに減少していることがわかります.
次に,Legacyレポートで詳細をみてみましょう.
5/14時点では,Commercial(実需の投資家)はVIXショートは減少VIXロングは増加,Noncommercial(大口投機家)はVIXショートは大幅減VIXロングは横ばいとなっています.その結果,Noncommercial のVIXショートのネットポジションは大きく縮小しています.急落のリスクは低下傾向にあるといえるでしょう.
最後に,TFFレポートで確認してみます.
5/14時点のネットポジションに着目すると,Dealer のVIX先物ロングが大幅に減少しています.Dealerは顧客からの注文を引き受ける立場ですから,市場としてはVIX先物ショートが大幅に減ったということを意味します.面白いのは実際にVIX先物ショートが減ったのは Asset Manager(機関投資家)のポジションで,Leverage Funds (ヘッジファンド,大口投機家)のポジションはほとんど変わっていないということです.ヘッジファンド的には低ボラティリティ=株高目線ということでしょうか.これがそのとおりなら良いですが,潮目が変わると急落もままありそうですね.
おわりに
今回は2019/5/14時点のVIX先物の建玉数を確認しました.まとめると,
- VIX先物の建玉数は減少傾向で,VIX先物のショートポジションは大きく解消で,株価急落リスクは減少
- ただし,ヘッジファンドのVIX先物のショートポジションは高水準のまま.ポジティブに考えるとヘッジファンドは株高に強気,ネガティブに考えると悪材料で急落リスクあり
といった感じでしょうか.しらんけどー(´ー`)
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