【2020年2月25日】VIX先物の建玉数を確認: 投機筋はVIX先物を売り増し!?

新型コロナウイルスの影響がようやく米国でも現れつつあり,その結果,長らく好調だった米国株式市場も急落しました.これを発端に世界同時株安が発生した状況です.今の所高値からS&P500は高値から10%超の下落となり調整入りしました.

ということで,2020年2月25日時点のVIX先物の建玉数を確認したいと思います.

最新のVIX先物建玉の記事はこちら.

【2020年3月17日】VIX先物の建玉確認: 投機筋の売玉は減ったもののまだまだショート!?

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Commitments of Traders (COT) レポート

Commitments of Traders (COT) レポートは,米商品先物取引委員会(CFTC)によって,各上場商品の建玉明細を公表するように義務付けられている,市場参加者別の建玉報告書です.なお,CFTCは米国内の株価指数先物や通貨先物などの取引を監視する権限を持つ政府機関です.

COTレポートにはいくつか種類があり,Legacyレポートは Commercial と Non-commercial の2つに部類され,Traders in Financial Futures (TFF)レポートは金融商品である通貨や,債券,株式,VIXなどを4つに分類されます.COTレポートは現地時間の毎週火曜日での建玉数をその週の金曜の午後に発表されます.

Legacy レポートの分類は次のように考えられます.

  • Commercial: 実需の投資家,現物業者など
  • Noncommercial: 大口投機家,ファンド
  • Nonreportable: 非報告建玉(小口の投機家)

出典 Commitments of Traders
出典 Explanatory Notes

また,TFF レポートの分類は次のように解釈できます.

  • Dealer: 市場の仲介・売り方 (sell side).大手銀行や証券ディーラーなど.
  • Asset Manager: 機関投資家.年金ファンド,投資信託,保険会社など.
  • Leveraged Funds: ヘッジファンド.大口の投機家.
  • Other Reportable: 上記以外の報告義務のあるトレーダー.企業の中央銀行,小規模な銀行など.
  • Non Reportable: 非報告建玉.小口の投機家

参考(PDF) TRADERS IN FINANCIAL FUTURES Explanatory Notes

なお,Dealer は仲介なので,その他のカテゴリの参加者の逆のポジションを主に持つことになります.

VIX先物建玉数(2020/2/25)

まずは,VIX先物建玉数の推移を確認.なお,以降のグラフは2018年のVIXショック以降の推移です.

VIX先物の建玉数(オープンポジション)は,直前の週と比べほとんど変化ありません.どちらか一方に動くと思っていましたが,意外でした.

次にLegacyレポートを見てみます.上のグラフが実際の建玉数で下のグラフがネットの建玉数です.

大口投機家(Noncommercial)の売玉数と実需の投資家(Commercial)の買玉数がともに先週より大きく減少し,反対にそれぞれの買玉数と売玉数がともに大きく増加しています(上図).それにともなって,VIX先物ショートは先週の半分程度にまで縮小しています(下図).これは株価の急落でよく見られる減少で,VIXショックのときも起こっていました.

最後にTFFレポートでVIX建玉数を見てみます.

こちらはLegacyレポートとは少し異なっています.ヘッジファンド(Leveraged Funds)はVIX先物の売玉が顕著に増加する一方で,機関投資家(Asset Manager)のVIX先物売玉が大きく減少しています(上図).それぞれに対応するヘッジファンドの買玉と機関投資家の売玉はそれぞれわずかに減少と増加しています.その結果,ネットでは,ヘッジファンドはVIXショートに大きく傾き,中立的だった機関投資家はVIXロングに大きく傾きました(下図).注意しないといけないのは,ヘッジファンドは新規にVIX先物を売っているのに対し,機関投資家はVIX先物のショートを決済した結果ということです.25日時点であることを考えると,28日までにさらにS&P500は下落しているので,ヘッジファンドのVIXショートはつかまっているかもしれません.ただ,仲介(Dealer)のVIX先物買玉数は減少しているので,市場全体としてはVIXショートの傾きは縮小しています.

ということで,株価急落時にみられる,ヘッジファンドのVIXショートの決済がみられず,逆にどんどんショートに傾けにいっているのが気になります.これだけをみると,この株価急落は一時的で,積極的にリスクを取りにいっているようにも思います.

おわりに

今回は2020年2月25日時点のVIX先物建玉数を確認しました.VIX先物のネットショートは少し減少しているものの株価急落にみられる,ヘッジファンドのVIX先物のショートの買い戻しがみられません.逆にヘッジファンドはVIX先物を売り増ししリスクを取りにいっています.25日時点の建玉数であるため,株価の下落は週末の28日まで続いていることから,状況は変わっているかもしれませんが.

いずれにしても株価の下落は,少なくとも大口投機家(Noncommercial)のVIX先物がネットロングになるまで続くと思われます.さらなる株価の下落の心づもりをしておいたほうが良いと思います.しらんけど.

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