米国国債20年超に連動するETFの実質コストについてのまとめ

ポートフォリオに債券をいれる際に,米国国債20年超(US. 20+ Treasury Bond)のETFである TLT は候補になります.また,レバレッジド・ポートフォリオを組むときには,そのレバレッジッドETFを使います.

しかし,米国国債20年超のレバレッジドETFは設定されてから日が浅く,2009年以降のデータしかないため,バックテストを行うのには不十分です.

残念なことに米国国債20年超のデータは,S&P500のようには簡単には手に入りません.そのため,TLT(配当込み)にレバレッジをかけたものからの乖離を実質コストとして考えます.

というこで今回は,米国債20年超のレバレッジドETFの実質コストをまとめました.

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米国国債20年超に連動するETF

TLTを除く,米国国債20年超のETFの一覧です.

symbolnameleverage
UBTProShares Ultra 20+ Year Treasury2
TMFDirexion Daily 20+ Year Treasury Bull 3X Shares3
TYBSDirexion Daily 20+ Year Treasury Bear 1X Shares-1
TBFProShares Short 20+ Year Treasury-1
TBTProShares UltraShort 20+ Year Treasury-2
TMVDirexion Daily 20+ Year Treasury Bear 3X Shares-3
TTTProShares UltraPro Short 20+ Year Treasury-3

なお,これらは連動している指数が異なっていますが,ここでは同一とみなしています.

実質コスト

ここでは,TLT(配当込み)の日次リターンとETFの日次リターンの差(乖離幅)を実質コストとします.つまり,

\[
\small
(実質コスト) = (ETFの日次リターン) – (TLT(配当込み)の日次リターン) \times (ETFのレバレッジ)
\]

です. 本来は,TLTではなくて,「Barclays Capital U.S. 20+ Year Treasury Bond Index」や「NYSE 20 Year Plus Treasury Bond Index」からの乖離をみるべきなのに注意してください.

一般的にはコストの概念と符号が逆ですが,実質コストが負であればリターンの押し下げ要因になります.

評価

評価条件

条件は以下の通り.

  • 直近1年,3年,5年,7年,設定来の5つの期間の実質コストの平均を算出
  • すべて配当込み
  • 使用したデータの最大期間: 2002/07/30から2018/9/11
    • データがないものについてはNAと表記
  • 1年の営業日は250日とする

実質コスト

1日あたり

1日あたりの平均実質コストを表にまとめます.単位は%です.

1357MAX
UBT-0.00980-0.00672-0.00485-0.00435-0.00353
TMF-0.01568-0.01124-0.00835-0.00747-0.01132
TYBS0.006790.00037-0.00125-0.00238-0.00208
TBF0.007660.00161-0.00103-0.00237-0.00387
TBT0.011940.00356-0.00056-0.00260-0.00704
TMV0.012860.00025-0.00591-0.00818-0.00693
TTT0.016860.00555-0.00004NA-0.00220

年率換算

1日あたりの実質コストを年率にすると,こんな感じです.単位は%です.

1357MAX
UBT-2.420-1.665-1.206-1.082-0.879
TMF-3.844-2.770-2.067-1.851-2.791
TYBS1.7110.092-0.312-0.594-0.520
TBF1.9340.404-0.258-0.592-0.962
TBT3.0300.894-0.140-0.649-1.745
TMV3.2670.063-1.466-2.023-1.717
TTT4.3051.397-0.011NA-0.549

実質コスト(外れ値除去済み)

外れ値を除去して通常時の乖離をみてみましょう.リターンは多くの場合で正規分布に従っているとみなせるため,外れ値はスミルノフ・グラブス検定(有意水準1%)を再帰的に適用して除去しました.

1日あたり

外れ値を除去した後の,1日あたりの実質コストです.単位は%です.

1357MAX
UBT-0.01269-0.01285-0.00663-0.00558-0.00353
TMF-0.01568-0.01147-0.00837-0.00816-0.00805
TYBS-0.004350.00037-0.001590.004490.00717
TBF0.007660.00224-0.00066-0.00230-0.00377
TBT0.011940.00356-0.00097-0.00264-0.00571
TMV0.012860.00012-0.00644-0.00753-0.00731
TTT0.016860.00555-0.00006NA-0.00282

年率換算

外れ値除去後の1日あたりの実質コストを年率にすると以下のようになります.単位は%です.

1357MAX
UBT-3.124-3.162-1.645-1.386-0.879
TMF-3.844-2.828-2.070-2.018-1.992
TYBS-1.0810.092-0.3971.1291.807
TBF1.9340.562-0.164-0.573-0.938
TBT3.0300.894-0.242-0.658-1.418
TMV3.2670.030-1.598-1.864-1.811
TTT4.3051.397-0.014NA-0.703

まとめ

今回は米国債20年超ETFのTLTを基準に,米国国債20年超のレバレッジドETFの乖離を実質コストとして求めてみました.

S&P500のレバレッジドETFと同様,直近の乖離が大きくなっていますね.長期のバックテストをするには金利コストをちゃんと考慮した方が良さそうですね.

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