レバレッジドETFを含むS&P500に連動するETFの実質コストのまとめ

レバレッジドETFを含め,S&P500に連動するETFってたくさんありますよね.ETFによっては設定されたのが比較的日が浅いと,バックテストをするにしても相場が良いときのデータしかなく,不十分な評価になりがちです.

一方で,長期のS&P500指数をそのまま利用すると大きめにリターンを見積もってしまいます.なぜなら,ETFでは経費率に加え,その他の経費やトラッキング・エラーがあるため,元の指数から乖離するからです.

ということで今回は,S&P500指数(配当込み)を使った長期のバックテストのために,ETF毎にS&P500指数(配当込み)との乖離を実質コストとしてまとめました.

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S&P500連動のETF

今回実質コストを求めた,S&P500指数に連動するETFの一覧です.

symbolnameleverage
SPYSPDR S&P 500 ETF1
VOOVanguard S&P 500 ETF1
SPUUDirexion Daily S&P 500 Bull 2X ETF2
SSOProShares Ultra S&P5002
SPXLDirexion Daily S&P500 Bull 3X ETF3
UPROProShares UltraPro S&P5003
SHProShares Short S&P500-1
SPXSDirexion Daily S&P 500 Bear 3X ETF-3
SPXUProShares UltraPro Short S&P500-3

実質コスト

ここでは,S&P500(配当込み)の日次リターンとETFの日次リターンの差(乖離幅)を実質コストとします.つまり,

\[
\small
(実質コスト) = (ETFの日次リターン) – (S\&P500(配当込み)の日次リターン)\times(ETFのレバレッジ)
\]

です. 一般的にはコストの概念と符号が逆ですが,実質コストが負であればリターンの押し下げ要因になります.

評価

評価条件

条件は以下の通り.

  • 直近1年,3年,5年,10年,設定来の5つの期間の実質コストの平均を算出
  • 使用したデータの最大期間: 2000/1/1から2018/9/11
    • データがないものについてはNAと表記
  • 1年の営業日は250日とする

実質コスト

まずは単純に実質コストの平均をみてみます.たまに大きめの乖離が発生しているので,それに大きな影響を受けます.平常時より少し大きめな値になっていると思えば良いと思います.

1日あたり

1日あたりの平均の実質コストを表にまとめます.単位は%です.

13510MAX
SPY-0.00047-0.00046-0.00046-0.00052-0.00037
VOO0.00002-0.00008-0.00013NA-0.00016
SPUU-0.00768-0.01312NANA-0.01115
SSO-0.01301-0.00918-0.00750-0.00908-0.01161
SPXL-0.02238-0.01650-0.01414NA-0.01412
UPRO-0.02196-0.01499-0.01276NA-0.01089
SH0.009830.003600.00134-0.000370.00519
SPXS0.023340.009020.00291NA-0.00664
SPXU0.023780.011350.00682NA0.00192

わかることをざっとまとめるとこんな感じ.

  • レバレッジなし(x1)のETFの実質コストは安定している.経費率にともない,実質コストも削減されている.
  • レバレッジドETFの実質コストは不安定.直近の方がコストが高くなっている(金利の影響か?)
  • Direxion より Proshares の方がコストが小さめ

年率換算

1日あたりの実質コストを年率換算すると以下の表のようになります.単位は%です.

13510MAX
SPY-0.117-0.114-0.114-0.129-0.092
VOO0.004-0.019-0.034NA-0.040
SPUU-1.901-3.227NANA-2.750
SSO-3.201-2.269-1.858-2.245-2.861
SPXL-5.442-4.042-3.474NA-3.469
UPRO-5.342-3.679-3.140NA-2.686
SH2.4880.9050.335-0.0921.306
SPXS6.0082.2790.730NA-1.645
SPXU6.1262.8781.719NA0.481

実質コスト(外れ値除去済み)

外れ値を除去して通常時の乖離をみてみましょう.リターンは多くの場合で正規分布に従っているとみなせるため,外れ値はスミルノフ・グラブス検定(有意水準1%)を再帰的に適用して除去しました.

1日あたり

外れ値を除去した後の1日あたりの実質コストです.単位は%です.

13510MAX
SPY-0.00133-0.00074-0.00062-0.00133-0.00125
VOO-0.00056-0.00006-0.00037NA0.00042
SPUU-0.00053-0.01061NANA-0.00172
SSO-0.01326-0.00925-0.00780-0.00603-0.01019
SPXL-0.02029-0.01579-0.01371NA-0.00928
UPRO-0.02347-0.01601-0.01286NA-0.01091
SH0.009830.003600.00135-0.000180.00481
SPXS0.027350.009720.00292NA-0.00502
SPXU0.026110.012110.00682NA0.00271

年率換算

外れ値を除去した後の年率換算の実質コストです.単位は%です.

13510MAX
SPY-0.331-0.185-0.154-0.333-0.312
VOO-0.139-0.015-0.092NA0.104
SPUU-0.133-2.618NANA-0.428
SSO-3.260-2.286-1.931-1.497-2.516
SPXL-4.947-3.870-3.370NA-2.293
UPRO-5.698-3.924-3.165NA-2.691
SH2.4880.9050.337-0.0461.210
SPXS7.0772.4610.733NA-1.246
SPXU6.7443.0741.719NA0.681

おわりに

今回はS&P500(配当込み)から各ETFがどれだけ乖離しているかを実質コストとしてみてみました.

これで,各ETFが登場する前の値動きについて,実質コストを加味したバックテストができるようになりました.

レバレッジのかかっていないETFの実質コストは安定しているものの,レバレッジをかけているETFは結構ばらつきがありますね.その結果,レバレッジのかかっているETFの長期のバックテストについては,単純に固定的に実質コストを加味するだけではダメそうですね.この場合にはカーネルさんみたいに,ちゃんと金利コストを考慮したほうが良さそうです.

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