8月に入って例のごとく,トランプ大統領の Twitter を契機に,米中貿易戦争が再熱しました.その結果,今まで15以下の低水準であったVIXが一時24まで急騰しました.
VIXが少し跳ねたことでVIX先物の建玉数に変化があるのか確認しましょう.
結論としては,売玉は減ったものの依然建玉数は多く,また大口投機家(leveraged fund)の売玉が増加していることから,投機筋は短期的な調整として株価は強気に見ていると推測しています
最新のVIX先物建玉の記事はこちら.
Commitments of Traders (COT) レポート
Commitments of Traders (COT) レポートは,米商品先物取引委員会(CFTC)によって,各上場商品の建玉明細を公表するように義務付けられている,市場参加者別の建玉報告書です.なお,CFTCは米国内の株価指数先物や通貨先物などの取引を監視する権限を持つ政府機関です.
COTレポートにはいくつか種類があり,Legacyレポートは Commercial と Non-commercial の2つに部類され,Traders in Financial Futures (TFF)レポートは金融商品である通貨や,債券,株式,VIXなどを4つに分類されます.COTレポートは現地時間の毎週火曜日での建玉数をその週の金曜の午後に発表されます.
Legacy レポートの分類は次のように考えられます.
- Commercial: 実需の投資家,現物業者など
- Noncommercial: 大口投機家,ファンド
- Nonreportable: 非報告建玉(小口の投機家)
出典 Commitments of Traders
出典 Explanatory Notes
また,TFF レポートの分類は次のように解釈できます.
- Dealer: 市場の仲介・売り方 (sell side).大手銀行や証券ディーラーなど.
- Asset Manager: 機関投資家.年金ファンド,投資信託,保険会社など.
- Leveraged Funds: ヘッジファンド.大口の投機家.
- Other Reportable: 上記以外の報告義務のあるトレーダー.企業の中央銀行,小規模な銀行など.
- Non Reportable: 非報告建玉.小口の投機家
参考(PDF) TRADERS IN FINANCIAL FUTURES Explanatory Notes
なお,Dealer は仲介なので,その他のカテゴリの参加者の逆のポジションを主に持つことになります.
VIX先物建玉数(2019/08/06)
まずは,VIX先物建玉数の推移を確認.なお,以降のグラフは2018年のVIXショック以降の推移です.
8/6時点での建玉数は若干減少したものの,2018年10月の急落と2019年5月の急落と比べるとその下げ幅は小さいです.もちろん急落の初動だからかもしれませんが.
次にLegacyレポートを見てみます.上のグラフが実際の建玉数で下のグラフがネットの建玉数です.
8/6時点では,Commercial(実需の投資家)はVIX先物のロングが減少し,ショートが増加しています.一方で,Noncommercial(大口投機化)のVIX先物ポジションはショートが減りロングが増加しています.
その結果,Noncommercial のネットでは,ショートに大きく傾いていたのが2019年5月の調整時まで減少しています.
最後にTFFレポートでVIX建玉数を見てみます.
VIX先物のショートポジションは減っているので,SellサイドであるDealerのVIXロングポジションは若干減少しています.
気になるのは,以下の点.Asset Manager (機関投資家)のVIX先物のロングポジションは微増である一方,ショートポジションが大きく減少しています.一方で,Leveraged Funds (ヘッジファンド,大口投機家)では,VIX先物のロングポジションが減少し,ショートポジションは単調に増加しています.
したがって,Asset Manager はVIXが増加したのでショートを手仕舞いし,Leveraged Funds はショートを売り増ししていることから,今回の調整は短期で終了しS&P500の株価に強気であると考えているように見えます.
おわりに
ということで2019/8/6時点のVIX先物の建玉数を確認しました.
売玉は減っているものの,全体の建玉数はそれほど減っていません.また,ヘッジファンド・大口投機家のネットのショートポジションは増加しており,今回の調整が短期的に終わり株価に強気であるようにみえます.
とはいうものの,結局の所,今回の調整が短期に終わるのか,それともしばらく続くのかわかりません.
ただ,VIX先物のポジションはまだまだショートに傾いており,米中貿易戦争の交渉が物別れに終わったときにそのショックを助長しかねないと思います.
なので,さらに株価が急落するような状況も想定し,たんたんとリスクヘッジのポジションは維持していきたいと思います.
コメント