長期的に資産形成する際に,定期的に自身の投資成績をチェックすることが大事です.
私は,日本株と米国株を対象とした株取引とオプション取引のアクティブ運用と,投資信託を使ったインデックス投資のパッシブ運用1を組み合わせています.プロの運用者でも「インデックスファンドに対して8割以上のアクティブファンドは勝てない」と言われている中で,私はアクティブ運用をしているわけですから,自分の判断が正しいのか適切に評価したいところです.
参考 SPIVA® U.S. Scorecard (PDF)
あまりにも投資のセンスがなければ,インデックス投資によるパッシブ運用の比率を高めた方が良いかもしれません.ただそうなると,2030年にFIREするという目標があとずれする可能性が高くなりますが.
ということで,投資成績の計算方法と適切なベンチマークとなる指数を決めたいと思います.
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投資成績の計算方法
まずは投資成績としてリターンを考えます.リターンは,投入資金に対していくら収益が得られたのかを表したものです.つまり,投入資金を$c$,収益を$y$とすると,リターンは$r=y/c$となります.
投資開始時に投入した資金から一切追加投資をしないのであれば計算は楽です.しかし,初期投資額が少ない私のようなサラリーマン投資家としては,どんどん追加投資をしないといつまでたっても早期リタイアなんて実現できません.しかし,追加投資を含めると,途端に投資成績を求めるのがややこしくなります.
また,統一された計算方法を用いないと,プロのアクティブファンドの成績とも比較できません.
とはいえ,あまりにも頻繁に計算する必要があると,記録をとること自体が億劫になります.まったり投資を続けるにはこういう手間を減らすのが大事だと思います.
ということで,個人投資家として負担が大きくならない範囲で出来る限り標準的な方法で投資成績を計算しようと思います.
ここらへんの話は森村ヒロさんのブログ「ひと手間くわえた積立投資で資産形成」が詳しいです.以降では,その内容を参考にして話をすすめます.
参考 投資パフォーマンスの計算方法 | ひと手間くわえた積立投資で資産形成
先出のブログの内容を一部引用すると,投資成績を計算するに当たって我々個人投資家が決めるべきことは以下になります.
このGIPSの規定をベースに、個人投資家向けに微調整すれば目的を達成することができます。主なポイントは
– ポートフォリオの定義
出典 投資パフォーマンスの計算方法 | ひと手間くわえた積立投資で資産形成
– 外部キャッシュフローとポートフォリオから発生したインカムの区別
– リターンの計算方法
– パフォーマンスの表示方法
の4点です。
これに沿って,私の投資成績の評価方法を整理します.
ポートフォリオの定義
冒頭に述べたように,私は日本株と米国株の株式取引,米国株のオプション取引とパッシブなインデックス投資による投資信託を行っています.これらを合わせて1つのポートフォリオとなるのですが,それぞれ性質が異なるので別々のポートフォリオとして管理します.つまり,
- 日本株ポートフォリオ
- 米国株ポートフォリオ
- 米国株オプションポートフォリオ
- 投資信託ポートフォリオ
にわけます.それぞれを独立したポートフォリオとして運用したうえで,資産全体としては合算して評価します.
また,投資に回している資産すべてをポートフォリオに含める必要があります.したがって,投資用の資金として用意している現金も含めて投資リターンを求めます.
外部キャッシュフローとポートフォリオから発生したインカムの区別
外部キャッシュフローとは,ポートフォリオへあるいはからの投資用資金の入出金や資産の入出庫のことです.投資用資金の入出金は新たに投資用資金を投入することと,止む終えない事情で投資資金を引き上げることに対応します.資産の入出庫は,複数のポートフォリオ間で,資産を移動させる場合が対応します.
私の場合は,米国株ポートフォリオと米国株オプションポートフォリオ間で比較的頻繁に資産の移動が発生する見込みです.オプション取引で,キャッシュセキュアードプットで権利行使された場合は,引き受けた株分の資金がオプションポートフォリオから米国株ポートフォリオに移動します.また,カバードコールで権利行使された場合は,もとの資産によっては米国株ポートフォリオからオプションポートフォリオに資金が移動します.
ポートフォリオから発生したインカムとしては以下が挙げられます.
- 売買利益(譲渡益)
- 配当金・分配金
- オプションプレミアム
一方で,アウトカムとしては以下となるでしょう.
- 売買損(譲渡損失)
- 売買手数料
- 口座維持料
- 譲渡益,配当金や分配金などの利益に対する課税
これらを,ポートフォリオのリターンを計算する際に考慮します.
リターンの計算方法
リターンは外部キャッシュフローを調整した時間加重収益率として計算されます.また,「期間及び部分期間リターンは、幾何的にリンクしなければならない」ということなので,年間リターンは月間リターンを用いて算出します.具体的には,年間リターン$r_{year}$は以下の式で求めます.
\[
r_{year} = \prod_{i=1}^{12}(1+r_i)-1
\]
$r_i$は$i$月の月次リターンです.
それでは,月次リターンの計算方法を考えます.どれくらい厳密にするかで,日次厳密法,修正ディーツ法,ディーツ法があるようです.順に計算が簡略化されます.日次厳密法はなかなかめんどくさいので,修正ディーツ法を用いて月次リターンを計算しようと思います.
修正ディーツ法
修正ディーツ法では,計算しようとしている期間のリターンは一定であると仮定したもとで,その期間の収益を平均元本で割ったものをリターンとします.平均元本は,外部キャッシュフローがポートフォリオに含まれていた時間で加重平均をとったものです.つまり,
\[
(平均元本) = (月初資産額)+\sum_{i}c_i\frac{n-i}{n}
\]
です.なお,$c_i$は月初を含む$i$日後に発生したキャッシュフロー額,$n$は対象月の総日数です.
修正ディーツ法を利用した月次リターン$r$は次式で求められます.
\[
r = \frac{(月末資産額)-(月初資産額)-\sum_{i}c_i}{(平均元本)}
\]
私は長期投資のバイ・アンド・ホールドをしていますが,銘柄を買った根拠が揺らいだとき,あるいは,見込んでいた利益の数年先を得た場合は,その銘柄を売却します.したがって,それなりに売買を繰り返すことがあります.売買の利益に対する課税は年末まで確定しません.売却益に対する課税は12月末に行われたとして,12月の月次リターンに含めます.
全ポートフォリオのリターン
さて,各ポートフォリオの月次リターンは以上のように求めます.個々のポートフォリオから資産全体のポートフォリオの月次リターンを計算できると便利です.
これは,単に各ポートフォリオの配分に応じた重みを乗じて,それらを足し合わせることで計算できます.
\[
r_{total} = \frac{\sum_j(ポートフォリオjの平均元本)\cdot r_j}{\sum_{j}(ポートフォリオjの平均元本)}
\]
なお,$r_j$はポートフォリオ$j$の月次リターンです.
パフォーマンスの表示方法
投資成績としては以下を求めようと思います.
- 月次リターン
- 年次リターン
- 年初来(YTD)リターン
また先出ブログより,
時系列で、ほかのファンドと比較したい場合、パフォーマンス測定対象ポートフォリオの「基準価額」を計算するようにするとよいです。各ファンドとも基準価額の時系列データを公表しているので簡単に比較ができるようになります。
出典 投資パフォーマンスの計算方法 | ひと手間くわえた積立投資で資産形成
とのことなので,基準価格を設定して運用したいと思います.このようにすることで,投資の楽しみが増えますね.
基準価格は次式で求めます.
\[
(基準価格) = 10000\times \prod_{k=1}^{K}(1+r_k)
\]
なお,$K$は運用期間(月)と$r_k$は運用開始から$k$ヶ月目の月次リターンです.
ベンチマーク
次に運用成績を評価するためのベンチマークを考えましょう.
運用成績を評価するには,評価の目的を明らかにする必要があります.評価の目的が,自身のアクティブ運用がインデックス対するパッシブ運用にアウトパフォームしているのか,あるいは,自身の投資成績が他の優れている指数に対してアウトパフォームしているか,では比較すべき指数は異なるでしょう.
前者であれば,自分の取引のうまさを評価したいわけですから,ポートフォリオの投資対象の全体を表す指数を比較に持ってくるべきでしょう.例えば,マザーズ銘柄を主に対象に組んでいるポートフォリオの評価にTOPIXを持ってくるのは不適切でしょう.この場合は,マザーズ指数をベンチマークとして採用すべきです.
一方で後者であれば,自身のポートフォリオが優れていることを示したいわけですから,S&P500などの一般的に優れているインデックスと比較するのが適当でしょう.この目的にTOPIXを採用するのはイマイチです.
さらに,自身のポートフォリオの収益に配当や分配金が含まれている場合は,配当込み指数と比較すべきでしょう.配当再投資を戦略として用いているならなおさらです.
もちろん,運用成績は気にせずに投資を楽しむというのなら,特にこのようにベンチマークを決めて比較する必要はないでしょう.
以上を踏まえて,私のポートフォリオは以下の指数と比較します.
- 日本株ポートフォリオ: TOPIX Net Total Return
- 米国株ポートフォリオ: S&P 500 Net Total Return
- オプションポートフォリオ: なし
- 資産全体: S&P 500 Net Total Return
参考 TOPIX Net Total Return (TOPXDVNET) | Investing.com
参考 S&P 500 Net TR | Investing.com
私の日本株ポートフォリオは,投資対象としている市場に特に偏りがないため,税引き後配当込TOPIXをベンチマークとして採用します.米国株ポートフォリオでは,S&P500に採用されている銘柄から選ぶので,税引き後配当込S&P500がベンチマークとして適切でしょう.しかし,オプションポートフォリオについては,適切な指標がないのでベンチマークはありません.資産全体としては,税引き後配当込S&P500をベンチマークとします.
まとめ
投資評価の計算方法とベンチマークの決め方について検討しました.
ポートフォリオの月次リターンは,外部キャッシュフローを考慮した時間荷重収益率を修正ディーツ法によって計算します.年次リターンは毎月の月次リターンをかけ合わせて求めます.
ポートフォリオのベンチマークには,評価の目的とポートフォリオの内容に合わせた指数を用いることが大切です.自身のポートフォリオが一番優れていることを示すには,S&P500をベンチマークとしてもってきたらいいでしょう.
hassファンドの基準価額を作って,ファンドマネージャー気分
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