ウルトラバランス 世界株式: 世界株式・債券・金に分散投資するレバレッジドバランス投信

出典: ウルトラバランス世界株式 商品内容説明資料(アストマックス投信投資顧問株式会社)

アストマックス投信投資顧問よりレバレッジドバランス投信である「ウルトラバランス 世界株式」が登場しました.

待ちに待った,日興アセットマネジメントのグローバル3倍3分法ファンドに続く2つ目のレバレッジドバランス投信です.意外なところから登場してきましたね.

ということで今回は,ウルトラバランス世界株式について商品概要をまとめるとともに,簡易的ですがパフォーマンスをバックテストしました.結論としては,1つのレバレッジドバランス投信としてみると悪くないと思いますが,グローバル3倍3文法ファンドと比べると少し物足りないかぁと思います.ただし,それぞれのファンドの実際の指数のデータをではないこと,超長期のヒストリカルデータを使用していないことなど問題があるので,いずれの結果もあくまでも参考程度と思ってください.

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ウルトラバランス 世界株式

ウルトラバランス世界株式は,世界株式・各国債券・金に分散投資する投資信託です.

以降の商品内容は主に交付目論見書等の資料に基づきます.

外部サイト ウルトラバランス 世界株式 交付目論見書
外部サイト ウルトラバランス 世界株式 請求目論見書
外部サイト ウルトラバランス 世界株式 商品内容説明資料

コスト(運用管理費用などを含む信託報酬)

信託報酬は年0.53%(税抜)1内訳は,委託会社0.25%,販売会社0.25%,受託会社0.03%です.

信託報酬に運用管理費用等を加えた実質的なコストは,税込みで年0.7324%となります.

グローバル3倍3分法ファンドの実質的なコストは年0.4752%(税込)であることを考えると,ウルトラバランス世界株式のコストは割高です.

なお,これとは別に売買費用であったり,先物の価格に織り込まれている金利などのコストがかかることに注意です.

資産配分: レバレッジをかけるのは債券と金

資産配分はこんな感じです.

出典: ウルトラバランス世界株式 交付目論見書

株式は現物保有で80%,債券と金は先物を使ってそれぞれ175%と35%にいう配分で,純資産額に対して290%の運用を行うことになります.つまり,レバレッジは純資産額に対して2.9倍です.

株式としては,iShares Edge MSCI Min Vol Global ETF(ACWV)に投資します.ACWVは世界株式の大型・中型株をセクター比率などの制約のもと分散が小さくなるように選別したETFです.

債券は,米国国債フランス国債日本国債を先物運用でそれぞれ70%,70%,35%の計175%になるように運用します.

金は米国の金先物で運用することになっています.

現物の株式は為替変動の影響を受けますが,先物運用では現地通貨建である証拠金と損益に対して為替変動の影響を受けます

リバランスは?

ウルトラバランス世界株式は,原則として上で説明した比率に固定されます.

資産価格の変動によって比率が変わった場合には一定のタイミングでその比率になるようにリバランスするとのことです.

その一定のタイミングが具体的にいつかというのは明記されていなかったため不明です.ただし,商品内容説明資料のなかのシミュレーションにおいては,毎月リバランスがされています.もしかしたら,シミュレーションに用いたデータが月次データだったためかもしれませんが.

レバレッジは実質10.5倍

先物運用部分について注目してみましょう.

現物運用の80%を除いた,純資産額の20%の現金を元に先物部分の合計が210%となるように運用するということは,実質10.5倍のレバレッジをかけていることになります.

レバレッジをかけることで問題になることは,資産価格の下落によって証拠金がショートすることです.日次でリバランスすることを想定すれば2仮に普段は月次でリバランスしていたとしたとしても,急激に資産比率の変動があった場合には日次でリバランスすることになるのでは?と思っています,20%から先物の証拠金を差し引いた額から1日の最大変動幅が超えなければ資金はショートしません.

これについては,後ほどバックテストの部分で確認してみます.

バックテスト

方法と条件

以下のように,各資産をそれに類するもので代用することで,擬似的にウルトラバランス世界株式(1倍)を作りました.それを毎日リバランスした結果の日次リターンを2.9倍にすることで,ウルトラバランス世界株式を擬似的に再現しました.

  • 世界株式: ACWV(JPY建)
  • 米国国債: US 10 Year T-Note Futures(USD建)
  • 仏国国債: Thomson Reuters French 10 Years Government Benchmark(EUR建)
  • 日本国債: Thomson Reuters Japan 10 Years Government Benchmark(JPY建)
  • : GLD (USD建)

商品内容説明資料等で行われているシミュレーションと使用している指数が異なることやリバランスの間隔が異なることに注意してください.債券のデュレーションは記載がなかったので,10年を仮定しています.

また,先物運用部分(債券と金)については,その証拠金と損益に対して為替の影響ができます.しかし,シミュレーションではそれを厳密に行うには手間がかかりすぎるため,現地通貨建でのリターンを用いています.評価期間中では,円安になっていることから,この想定はパフォーマンスを過小評価する方向へ効いています.

比較として,グローバル3倍3分法ファンドのシミュレーション結果も併記しています.シミュレーションの方法は以下の記事と同様です.

パフォーマンス

2011年10月21日から2019年8月15日まで3ACWVのデータがあるのが2011年10月20日からなので,この日からのバックテストになっています.の各資産の変化を確認します.なお,ACWVは円建てで,それ以外は現地通貨建てです.

ACWVは世界的な株高と円安を追い風に約8年で3倍になっています.債券では,仏国債が好調で日本国債が微増,米国債がヨコヨコという状況でした.金は,ちょうど開始時が高値で最終的に-20%のリターンになっています.

そういう状況において,ウルトラバランス世界株式を擬似的にバックテストをすると以下のようになりました.

ウルトラバランス世界株式は,バックテスト開始から2016年頭頃まで,ACWV(円建)やVT(円建)とほとんどかわりません.2016年を超えると徐々にACWVやVTよりリターンが高くなってます.2019年からウルトラバランス世界株式のリターンは急激に高くなっています.これらはすべて,金のパフォーマンスに左右されているように見えます.

都合よく解釈すると,ウルトラバランス世界株式は金の調子が悪くてもACWV並のリターンが得られ,金の調子が良くなるとACWVを大きく上回るリターンが得られる投信,といったところでしょうか.

しかし今回の結果からは,長期的にはグローバル3倍3分法ファンドの方がリターンが高くなっています.金の活躍が期待できる時期にウルトラバランス世界株式に投資をするか,長期的に金が活躍できる時期の方がそうでない時期に比べて長いと予想するならウルトラバランス世界株式に投資するというような使い方になるのでは,と思います.

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ウルトラバランス世界株式はイケてませんでした,で終わるとおもしろくないので,グローバル3倍3分法の実績データと比較しました.期間は2018年10月4日から2019年8月16日です.ウルトラバランス世界株式のコストとしては,年率0.7324%を日あたりに直したものを日々のリターンから差し引いています.

この期間においては,ウルトラバランス世界株式はグローバル3倍3分法ファンド(実績)をアウトパフォームしています.2019年6月まではそれほど違いはありませんが,それ以降は大きく差が開いています.これはちょうど金価格が上がったことが寄与しています.

主要指標

2011年10月21日から2019年8月15日までのバックテスト結果から各種指標を求めてると以下のようになりました.

ウルトラバランス世界株式(1倍)グローバル3分法ファンドウルトラバランス世界株式グローバル3倍3分法ファンドACWVVT
年間リターン(%)6.06.517.619.914.513.6
標準偏差0.04410.04550.12790.13650.14810.1889
シャープレシオ1.3511.4181.3791.4560.9780.720
ソルティノレシオ0.1220.1270.1220.1270.0880.068
最大ドローダウン8.37.722.821.614.826.9

ウルトラバランス世界株式のシャープレシオはACWVやVTより改善しており,標準偏差(リスク)も抑えられています.レバレッジドバランス投信として合格だと思います.ただ,グローバル3倍3分法ファンドと比べると,標準偏差が小さいもののそれ以上にリターンも低い結果,ウルトラバランス世界株式のシャープレシオはグローバル3倍3分法ファンドのそれより劣後しています.もちろん十分な水準なんですけどね.

リターン分布

次に日次リターンの累積密度関数(CDF)を確認しましょう.

平均(%/日)平均(%/年)中央値(%)標準偏差(%)最小値(%)最大値(%)
ACWV0.058061415.61682400.09064770.9330276-6.8556854.087296
GLD-0.0019048-0.47507110.01715250.9448061-8.7808264.903837
米国10年国債0.00117310.29370960.00000000.2779407-2.1556701.231923
仏国10年国債0.02457146.33464170.00567010.3365435-1.8903352.574334
日本10年国債0.00908832.29797580.00000000.1443502-1.0474061.131330
ウルトラバランス世界株式(1倍)0.02336566.01464670.03526540.2779337-1.9725541.577605
グローバル3分法ファンド0.02522326.50801090.01867650.2865602-2.3222461.485682
ウルトラバランス世界株式0.067760118.45262880.10226970.8060077-5.7204074.575055
グローバル3倍3分法ファンド0.075669620.81646190.05602940.8596805-6.9667404.457046
ウルトラバランス世界株式(先物部分)0.02489366.42030070.03020230.5493871-4.3317643.157616
VT0.057752915.52775180.10913871.1901682-9.1478114.644401

ここ8年では,ウルトラバランス世界株式の先物運用では最大で約4%強の下落幅となっています.これぐらいなら,純資産額の20%に対して10.5倍の先物運用をしても十分なバッファがあると思います.

全資産から一気に資金が抜けるようなパニックが起こらない限り,資金がショートすることはないと思います.仮に,そのような自体が起きた場合には,レバレッジをかけていない普通のファンドもただではすまないと思いますが.

ドローダウン分布

さて,ドローダウンの分布も確認します.

ウルトラバランス世界株式とグローバル3倍3分法ファンドのドローダウンの分布はほとんどかわりませんね.そして,両方ともVTには勝っていますが,ACWVには負けていますね.

おもうところ

なぜ世界株式にACWVなのか?

ウルトラバランス世界株式には最小分散のスマートベータETFであるACWVが採用されています.バックテストで確認したように,最小分散はVTのようなETFよりアウトパフォームすることが多いです.

その点で採用されたのでは?と思いますが,どうせ最小分散を取り入れるのならポートフォリオ全体で取り入れるた方が良いのでは?と思います.

いろんな資産を組み入れた最終的なポートフォリオのシャープレシオが高ければ良いわけで,個々の資産のシャープレシオの高低は関係ありません.組み合わせる資産同士の相関係数が低いことがポートフォリオのリスク低減に大きく効果があり,同じシャープレシオであればボラティリティが高い資産を組み合わせた方がリターンが向上する傾向にあります.

ちゃんと検証したわけではないですが,直近の相関係数をみたところACWVとIET(US10年債ETF)はVTとIETと比べ,かなり大きかったです.つまり,VTの方がポートフォリオの標準偏差を低減できる可能性があると思います.

そうであるなら,ACWVのかわりにVTでもACWIでもを採用して,固定比率ではなく,最小分散で各資産の比率を決めるようにしたほうが結果としてシャープレシオの高いポートフォリオができるんじゃないかなぁと想像しています.もちろん間違っているかもしれませんけどね.

なぜフランス国債?

ウルトラバランス世界株式では,債券として,米国債,仏国債,日本国債の3つの地域の債券に先物を利用して投資します.

3つの地域に分散させるのは,先進国に分散させるという意味で理解していますが,ヨーロッパでは仏国債が採用されています.なぜ仏国債なのか理由がわかりません.

単に,ヨーロッパの国々のなかで過去の国債のパフォーマンスが良かったから,みたいな理由で採用されていないことを祈ります.

また,3地域の比率が,日本だけ少ないのも気になります.どういった基準でこの配分にしたのでしょうか?わたし気になります!

おわりに

今回はウルトラバランス世界株式について商品概要をまとめるとともに,利用可能なデータを用いて実際に近いであろう資産で擬似的にウルトラバランス世界株式を模倣してバックテストを行いました.

その結果,ウルトラバランス世界株式はコストは高めなもののレバレッジドバランス投信としてはまぁ合格ラインだと思います.ただし,先発であるグローバル3倍3分法ファンドと比べると,シャープレシオが低めで,特にリスクオンが長期に続くとパフォーマンスが見劣りします.一方で,金が活躍するようなリスクオフが頻繁に起きると,ウルトラバランス世界株式は良さそうです.

まぁリーマンショックとか,わかりやすい下落相場を含むバックテストができていないので,ウルトラバランス世界株式の金の効果を過小評価しているかもしれません.

私個人としては,それ自身が利益を生み出さない資産である金はあまり好きではありません.そういう意味で,グローバル3倍3分法ファンドの方がまだ私の好みです.

最後に,繰り返しにはなりますが,ウルトラバランス世界株式の実際の資産とは違うので,実際は大きく違う可能性があることはご了承ください.

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