長期投資家にとって投資信託/ETFの実質コストはどれくらいなら許容できる?

ETFや投資信託などを購入する際には,売買手数料や信託報酬などのコストをできるだけ小さくすることが大切です.

コストは投資家の敵です.信託報酬や経費率といった保有している間にコストも複利で効いてくるので,小さなコストが思いの外リターンを押し下げてしまいます.

とはいえ,ビジネスモデルが変わらない限りはそのようなコストが0になることはないため,我々投資家はそれぞれが「これぐらいだったら許容できるかなぁ」と思える水準を考えながら投資することになるでしょう.

では,現在の投資信託やETFのコストはすでに許容できるくらいの水準になっているのでしょうか.それとも,まだまだ運用会社には頑張ってもらわないといけないのでしょうか.

ということで今回は,投資信託/ETFを保有している間にかかる実質コストが,どれだけ本来得られるだろうリターンを押し下げるのかを簡単に計算するとともに,現在の投資信託/ETFのコスト水準が我々投資家にとって納得できる水準なのかを見ていきたいと思います.

投資信託/ETFの保有中にかかるコスト

投資信託やETFのコストとしては,購入時あるいは売却時に一時的にかかるコスト(一時コスト)と保有している間にかかるコスト(実質コスト)の2つに大別できます.前者は販売手数料/売買手数料であったり為替手数料であったりします.後者は,信託報酬/経費率やその他の運用に関するコストが相当します.

10年や20年を超える長期投資では,一時コストは実質コストに比べ小さくなります.そのため,以降では実質コストのみを考えます.

ここで平均年間リターン$r$の指数に$n$年投資することを考えます.このとき,1円を投資したときのトータルリターンは次のようになります.

\[
TR = (1+r)^n
\]

その指数に連動する投資信託/ETFが実質コスト$r_c$であるとき,その資産のトータルリターンはこうなります.

\[
TR_a = (1+r-r_c)^n
\]

経費率などのコストは毎日薄くとられているので,単に年利が$(r-r_c)$となったとみなせます.

このとき,投資家から見ると指数のトータルリターン$TR$から投資信託/ETFのトータルリターン$TR_a$の差が,実質コスト$r_c$によって押し下げられたリターンになります.つまり,
\[
C=(1+r)^n-(1+r-r_c)^n
\]
です.指数のトータルリターンに対する,実質コストによって押し下げられたリターンの割合は次のとおりですね.
\[
R=1-\left(\frac{1+r-r_c}{1+r}\right)^n
\]

検証: 実質コストによる影響を定量的に見てみよう

以上の式を用いて実質コストによって押し下げらるリターンをコストとして定量的に見てみます.

実質コスト$r_c$の影響

まずは,実質コスト$r_c$によって押し下げられるリターンがどれくらいになるのかを見てみましょう.

最初に1円を投資した場合のトタールリターンからの差をコスト$C$として求めています.年利$r$は5%とし$r_c$は0.05%から2%までの範囲にしています.縦軸が対数であることに注意してください.

これに対応する,実質コストによって押し下げられるリターンの割合は次のようになります.

$r_c$が0.05%だとすると30年間もっていても,1.5%程度リターンを押し下げる程度の影響しかありません.実質コストでそれくらいなら文句ないでしょう.これぐらいの水準が実現できたら良いですよね(´ー`)

また,$r_c$が0.25%や0.50%だと,30年でそれぞれ7%弱や14%程度のリターンを押し下げる影響になります.実質コストが0.25%ぐらいなら十分じゃないでしょうか.

実質コスト$r_c$が1.0%ぐらいだと,約25%のトータルリターン押し下げています.ロボアドバイザーとかでは手数料としてそれぐらいとられてしまうので,余程うまい運用をしてくれない限りは微妙だと思います(´ー`)

年利$r$の影響

次に,$r_c$を0.25%に固定した上で,指数の年間リターン$r$の影響をみてみましょう.

年間リターンが大きいほど相対的にリターンの押し下げ幅が小さいことがわかります.

ただ,その影響は実質コストの大小による影響より小さいですね.例えば,30年間で年間リターンが10%と2%の間でも1%程度の違いしかありません.

事前にどれくらいリターンが得られるかはわからないこともあり,年利が異なる指数間の実質コストによるリターンの押し下げ幅の影響はそれほど気にしなくていいと思います.

実質コストの差による影響

最後に,同じ指数に連動する投資信託/ETFであるが,実質コストが違う場合にその差がリターンに対してどれくらい影響を与えるのかをみてみましょう.

実質コストが低い投資信託/ETFの実質コストを加味した年利を$r_b$とし,実質コストの差を$a$とすると,リターンの差は次式で求められます.

\[
D=(1+r_b)^n-(1+r_b-a)^n
\]

実質コスト込の年利$r_b$が5%の投資信託/ETFに1円投資した場合を例に実質コストの差の影響をみてみます.

これを割合にしたものも載せておきます.

実質コストに0.1%の差があれば,15年であれば1.2%程度,30年であれば2.5%程度トータルリターンに差がでてきます.例えば,実質コストが低い方の商品の,30年間のトータルリターンが1億円であれば,実質コストが0.1%大きい商品は250万円ほどリターンが減ったことになりますね.

長期投資を考えるなら,同じ指数に連動を目的とする商品同士であれば実質コストの差が0.1%以上あったら迷いなく小さい方を選んだほうが良さそうです.

おわりに

今回は,投資信託/ETFを保有している間にかかっている実質コストがリターンを押し下げる程度について考えてみました.

個人的には,実質コストとして0.25%程度なら許容範囲かなぁーと思っています.

同じ指数に連動している投資信託とETFでは,信託報酬/経費率で0.15%から0.2%の差があるものがみられます.これぐらいの差がある場合,20年・30年を超える投資をするなら馬鹿にならないリターンの押し下げ効果があるのでETFを選んだ方がいいかぁって思います.