インデックス投資家たるもの,投資対象のETFの実質コスト(経費率とその他の経費をあわせたもの)が気になることは当然だと思います.
とはいえ,ETFの実質コストは十分少なくなっていると思います.ETFの経費率は減少傾向であり,特にS&P500のETFは経緯率はものすごく小さくなっています.それに多少の経費が加わったとしても少ないのは変わらないでしょう.
ただ,パッシブにインデックス投資をしているとどうしても暇になっちゃうので,重箱の角をつつくようなことをしたくなります(´ー`)
「S&P500のETFです」といっている以上,S&P500から極力乖離しないほうが良いでしょう.もちろん,上振れてくれれるのは良いんですが,完全にコストをなくすことが無理である以上,普通は下振れすると考えられます.変に上振れする場合は逆に変なリスクを負っていないか心配になります.
ということで,今回はS&P500指数に連動するETFの実質コストについて調べてみました.なお,コストとしてETFを保有している間にコストのみを考慮し,売買手数料などは考慮しません.
S&P500
まずはS&P500に投資できるETFを確認しましょう.以下の3種類です.
ティッカー | 名称 | 経費率 (%) |
---|---|---|
SPY | SPDR S&P 500 ETF | 0.09 |
VOO | Vanguard S&P 500 ETF | 0.04 |
IVV | iShares Core S&P 500 ETF | 0.05 |
いずれのETFも経費率は0.1%を下回っており,VOOやIVVに至っては0.04%や0.05%といったところまで低コスト化されていますね.
調査方法
今回の調査は以下の条件で行いました.
- 対象ETF: SPY,VOO,IVV
- 対象期間: 2010/9/3から2018/2/16
- 日次実質コスト: S&P500 Total Return(TR)の日次リターンと各ETFの日次リターン(配当調整済)との差.したがって,経費率とその他の運用に関わるコストを実質コストとしています.
対象期間が2010/9/3からなのはVOOが上場した日であるからです.公平に比較するため期間をあわせています.
データは Yahoo! Financeのものを利用しました.
パフォーマンス
まずは,2010年9月からのパフォーマンスを確認します.各ETFの日次リターンは配当調整済みの値を用いています.
どのETFもほぼS&P500TRの線と重なっており,ほとんど違いがみられませんね.SPYは若干コストが高いことから下ぶれているのがわかります(赤線).
約7年間では経費率だけではなく,実質コストとして見た場合でもパフォーマンスに与える影響としては軽微であることがわかります.
実質コスト
以上で話が終わっても良いんですが,もう少し細かく見ていきます.
日次リターンの乖離分布
日次リターンの乖離(日次実質コスト)の分布を見てみます.あわせて,その時の統計量も表にまとめます.
Symbol | 平均 | 中央値 | 標準偏差 | 最小値 | 最大値 |
---|---|---|---|---|---|
SPY | -0.00000462 | -0.00000984 | 0.00047853 | -0.0044204 | 0.00413272 |
VOO | -0.00000142 | 0.0000132 | 0.00057555 | -0.0053266 | 0.00511755 |
IVV | -0.00000244 | -0.000000961 | 0.00060722 | -0.005476 | 0.00522878 |
横軸が0以下であれば下振れ要因になり,逆に0以上であれば上振れ要因になります.
分布や表を眺めてみるといろいろわかります.
- SPYは実質コストが大きく,他のETFより下振れしています.もちろん経費率が大きいことも寄与しています,一方で,乖離の振れ幅(標準偏差)については他の2つのETFより小さい
- VOOは平均的には乖離幅は小さく,SPYほどではないものの乖離の振れ幅が小さいです.また,中央値はプラスなので,上振れることが多いといえます.
- IVVは乖離の大きさはVOOより少し大きく,乖離の振れ幅も大きいです.
実用的にはVOOとIVVのパフォーマンスはほとんど変わりませんが,運用のうまさを考えるとVangurdのVOOが良いですね.
日次リターンの乖離幅の移動平均
最後に,1年間の営業日数を250日とし,250日間の平均乖離を見てみましょう.
これの意図は,「年々経費率は下がっているけど,その他のコストのところが増えていたら元も子もないよね」ということをチェックするためです.その他の運用コストが変わらず経費率が下がれば平均乖離が0に漸近していくはずです.
2012年頃と2018年頃を比べると,VOOとIVVは実質コストが0に近づいていっているようにみえます.とはいえ,2016年から2018年までをみるとそれほど実質コストが変わらないようにみえます.投資家と運用会社のWin-Winな関係を考えると,経費率が下がっても実質的に投資家に恩恵がないような水準になってきたのかなと思います.その他の運用コストも下がったり,変動幅が縮小しないと,これ以上経費率が小さくなってもあまりありがたくないように思いますね.
本来はもっとちゃんと検証しないといけませんが,今回はこれぐらいで終わりたいと思います.どうせ重箱の角をつつく話なので(´ー`)
おわりに
今回はS&P500指数に連動するETFの実質コストについて,ヒストリカルデータを用いて調査しました.
S&P500に投資するという観点では,VOOかIVVのどちらか好きな方に選べば良いと思います.投資家目線のVanguardが好きならばVOO,王者Blackrockが好きならばIVVって感じですかね.
一方でSPYは使いみちがないかというとそんなことはなくて,株式オプションを取引される方にとっては結構有用です.なぜなら,SPYのオプションは流動性が高いからです.S&P500のオプションでがっつりトレードしたい人には,他のETFより適しています.
しらんけど.
コメント