グローバル3倍3分法ファンドの実質コスト: 設定から2周年を迎えて

出典: グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型) 交付目論見書 | 日興アセットマネジメント

日興アセット・マネジメントの,レバレッジドバランス投信の「グローバル3倍3分法ファンド(1年決算型,隔月分配型)」(グロ3)が2018年10月4日に設定されてから2年が経ちました.1年目は株価が下がっている中,基準価額が上がっていったことで大きな資金流入があった一方で,2年目はコロナショックで他の資産と同様に基準価額が大きく下落しました.つまり,ここ2年でファンドにとって,追い風と向かい風の両方を味わった形となりました.

2周年たったので今一度,グロ3の実質コストをマンスリーレポートをもとに確認したいと思います.以降では,グロ3の1年決算型を基づいて進めていきますが,マザーファンドは同じなのでほぼ同様のことは隔月分配型にもいえると思います.結論としては,実質コストとしては十分小さく,ここ2年の運用で特別にコストがあがっているわけではないと言えると思います.

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基準価額と純資産総額

まずはグロ3の現状を確認するために,グロ3の基準価額と純資産総額の推移を確認しましょう.2018年10月末から2020年10月末までです1グロ3は2018年10月4日設定ですが,諸事情でこの期間のグラフになっています.

設定から2019年4月頃までは純資産総額はほとんど変わりませんでしたが,販路が広がったこととこれまでの基準価額の好調さから爆発的に資金の流入がありました.そこから,コロナショック前までに,4000億円規模まで増えました.コロナショックで大きく基準価額が下がるとともに純資産総額も大きく減り,その後の基準価額が回復しても純資産総額それほど回復していません.

2020年1月からの資金の流入出を確認してみましょう.簡易的に,基準価額の日次変化率と純資産総額の日時変化率の差でグラフにしました.プラスであればグロ3に資金が流入しており,マイナスであればグロ3から資金が流出しています.

これからわかることは,コロナショック底値付近でちょこっと流出が起きていますが,そこそこ基準価額が戻る6月までは意外と流出が少ないことです.それ以降は,資金が継続的に流出していることがわかります.コロナ禍で資金が必要になってグロ3が売却されたのか,それとも,グロ3が思っていたような値動きをしなかったからなのか,はたまた別の理由なのかわかりませんが.

累積リターン

一応,他の資産と累積リターンを比べて見ましょう.比較対象は,「eMAXIS Slim バランス(8資産均等型)」(Balance(8)),「eMAXIS Slim 全世界株式 (オール・カントリー)」(AllCountry),「eMAXIS Slim 米国株式 (S&P500)」(SP500)です.eMAXIS Slim 全世界株式の設定は2018年10月末なので,そこを1として累積リターンを計算しています.

2020年10月末時点では,グロ3は辛うじて累積リターンは他のものより高くなっていますが,コロナショックでは他の資産以上に大きく下落していることを考えると,コロナショック直前の高値で買った人はなかなかショックは大きかったかと思います.とはいえ,コロナショック後にグロ3が他の資産と比べて特別変な動きをしているわけではないように思います.ちなみに,コロナショック後はとりわけハイテク銘柄が牽引する相場環境だったので,グロ3とS&P500やオールカントリーが似たような値動きになったのかなぁと思います.

実質コスト

ここから本題のグロ3の実質コストです.実質コストは,マンスリーレポートの値動きの要因分解の項目にある「信託報酬等その他」をもとにグラフを作りました.注意する点としては,要因分解は概算値であるうえに「信託報酬等その他」は有効桁数1桁なので,値の正確性は乏しいですが,大きくはずしてはいないと思います.

青線(cost rate (annualized))は各月のコストの年率換算した値,赤線(trust fee)がグロ3の信託報酬である0.484%(税込),緑線(cost rate (12 month rolling))は過去12ヶ月分のコストの累積値,すなわち年間の実質コストです.

各月のコストをみると,設定直後からしばらくは少し高めを推移していましたが,ここ一年は年率0.6%くらいで推移しているようにみえます.特に,コロナショックでコストが増えるようなことは見受けられません.

また,緑線の12ヶ月分の実質コストの累積値をみると,年率0.5%から0.6%を推移していることがわかります.つまり,固定でかかる信託報酬を除いた,その他運用でかかるコストは高々0.1%強です.十分許容できる範囲だと思います.

おわりに

今回は,グロ3の2年間の基準価額と純資産総額の推移を確認するとともに,その間の実質コストを確認しました.

その結果,固定でかかる信託報酬等とは他に,運用でかかるコストは年率0.1%強と十分低コストでした.ただし,グロ3ではレバレッジをかけるのに先物を使用しているため,レバレッジにかかるコストは先物価格におりこまれます.先物のロールオーバーにかかるコストが「信託報酬等その他」に含まれていれば,レバレッジコストは「信託報酬等その他」に含まれていることになり,その場合はかなり低コストであるといえます.真実はわかりませんが,いずれにしても現状では気にするほどコストはかかっていないと思います.

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