わたし,VIX指数って好きなんですよねー
株式相場は順調なときがあれば不調なときがあります.VIX指数はS&P500のインプライド・ボラティリティを表し,おおざっぱにいうと市場参加者がS&P500のボラティリティをどれくらいか見積もっているかを意味します.ボラティリティなので急騰した場合ももちろん大きくなりますが,VIX指数は特に暴落すると大きく上昇します.
一方で,先のVIXショックで話題に上がったVIX関連ETP(2049,XIV,SVXYなど)は,VIX指数そのものに連動しているわけではないものの,VIX指数の動きに大きく影響を受けます.特に,VIX関連ETPは日次のリターンの$n$倍($n$は-1や2)で連動するように設計されているため,前日比でどれだけ上昇するかを確認しておくことは大事です.
ということで今回は,過去のS&P500の暴落局面でVIX指数がどれくらい上昇したのかということを簡単に整理しつつ,VIXが前日比で最大どれくらい上昇したのかを確認したいと思います.
VIX長期チャート
まずは,1990年から2018年3月5日現在までのVIXのチャートと,〇〇ショックや〇〇危機といった出来事をざっと確認してみましょう.
〇〇危機とか〇〇ショックが起きると,VIX指数はだいたい50くらいまで上昇していることがわかります.
こうやってみると,リーマン・ショックの89.53は驚異的な値ですね.他の危機と比べて,想定外が立て続けに起きたということがいえると思います.
前日比最大上昇率
調査条件
調査条件は以下の通りです.
調査に使ったデータの期間はVIX指数のデータがある,1990年1月2日から2018年3月5日までです.
前日比最大上昇率は次のように定義します.前日終値に対してどれだけ上昇したか,というのが問題になるので,前日比最大上昇率はこのようになります.
\[
(前日比最大上昇率) = \frac{(当日高値)-(前日終値)}{(前日終値)}
\]
前日比最大上昇率が正であれば前日終値より高くなった時間があり,負であれば1度も前日終値を上回ることがなかったことを意味します.
結果: 前日比最大上昇率の分布
前日比最大上昇率を,確率密度関数と累積密度関数の2種類で見てみます.
前日比最大上昇率の分布をみると,3,4%ぐらい上昇するのは普通だということがわかります.また,ざっくり全体の90%くらいはだいたい20%くらいの上昇率に収まっているものの,50%を超える上昇も結構頻繁にあることがわかります.
このことからも,VIX関連ETPを投機あるいは投資に利用しようとするなら,しっかりとリスク管理をしないと結構な頻度で大やけどを負ってしまうこと示唆しています.
前日比最大上昇率の統計量をまとめると次の表になります.
平均 | 中央値 | 標準偏差 | 最小値 | 最大値 |
---|---|---|---|---|
0.04174564 | 0.03204936 | 0.0653514 | -0.2456655 | 1.24147899 |
平均的には4%で,最大で約124%の上昇率ですね.この124%というのが,VIXショックのときの数値です.まさにVIXショックですね(´ー`)
結果: 前日比最大上昇率の上位10
最後に,前日比最大上昇率の上位10日分の結果をみてみましょう.
日付 | 前日比最大上昇率 | 備考 |
---|---|---|
2018/2/5 | 1.24147899 | VIXショック |
2015/8/24 | 0.90117728 | チャイナショック |
2007/2/27 | 0.70493274 | サブプライムローン問題 |
2010/5/6 | 0.63428338 | フラッシュ・クラッシュ |
1997/10/28 | 0.56298192 | アジア通貨危機 |
2016/6/24 | 0.52115942 | ブリグジット(イギリス国民投票) |
1991/11/15 | 0.51719198 | 日本バブル |
1990/7/23 | 0.51503519 | 日本バブル |
2017/6/29 | 0.5114656 | |
2011/8/8 | 0.5 | 米国債ショック |
100%超えをしているのはVIXショックのときのみです.チャイナショックで90%の上昇率ですね.
あのリーマン・ショックでも70%程度の上昇率です.リーマン・ショック関連の上昇率ではこれくらいしか上位には入っていませんね.これは,立て続けて問題が噴出したためで,サブプライムローン問題の一発目以降は市場はそれなりに身構えていたためだとと思います.
表全体を眺めると,ここ最近のちょっとした調整程度で上昇率が大きくなっている傾向があるようにみえます.例えば,2017年6月9日はVIXの値自体は小さかったのですが,前日比で比べると50%の上昇率でした.また,VIXショックの際もS&P500やNYダウ等の下げ幅では大きかったものの,下落率ではちょっとした調整程度でした.
つまり,少なくともVIXを投機/投資の対象として見るなら,VIXが著しく低いときに気をつけないといけないということです.VIXが10程度になるようなときには注意した方が良さそうですね.
おわりに
今回は,1990年からのVIX指数の推移と主な暴落局面を確認しつつ,VIXの前日比に対する最大上昇率を調べました.
VIXの上昇率という観点でみると,必ずしも金融危機などによる株価暴落のような局面でVIXの上昇率が大きくなるだけではなく,VIX指数が超低水準のときのちょっとした調整の際に上昇率が跳ね上がることがそれなりに起きます.
ここ最近ではVIXショックが起こるまでには,VIX指数が10を下回ることが多かったのですが,VIXショック以後は15から20の通常の水準に戻っています.市場が極端に警戒したり楽観したりしないほうが,相場が長続きする気がします(´ー`)
しらんけど(´ー`)
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