前回は北アメリカの人口動態をみてみました.やはりアメリカは長期投資の対象として右に出るものがない魅力的な投資対象でした.見劣りはするもののカナダも魅力的でした.
今回はアフリカと同様世界の約3分の1の人口を占めるアジアについて,人口動態の観点から長期投資として魅力的かどうかを見ていきたいと思います.
過去記事 世界の人口動態から長期投資に適した地域を考える (北アメリカ編)
過去記事 世界の人口動態から長期投資に適した地域を考える (アフリカ編)
過去記事 世界の人口動態から長期投資に適した地域を考える
コンテンツ
アジア
国連のアジア地域の分類は次のようになっています.なお,人口動態推計では,ロシアはヨーロッパに分類されているため今回は取り上げません.
地域別人口動態
アジアの地域別の人口動態推計とアジア全体における人口比率は以下のとおりです.グラフは国連の人口動態推計をもとに作成しています.
出典 United Nations Population Division
グラフの凡例をクリックすると,クリックされたものを非表示にできます.例えば,「Asia」をクリックするとアジア全体の人口推計が非表示になります.人口比率の低い地域の推計を見る場合に利用してみてください.
アジア全体では2055年頃まで人口増加が見込まれ,それ以降は緩やかに減少していく予想です.人口は2015年時点で44億人でピークの2055年頃では,52億人強の人口になるようです.過去記事で触れたように,アジア全体としては長期投資として魅力的だと思います.
アジア全体の人口を比率でみると,2015年時点で南アジアが41%,ついで東アジアが37%を占めています.2つの地域で約8割を占めていることになります.2100年時点では,この2つの地域をあわせた比率はほとんど変化ありませんが,南アジアの割合が増加する予想です.
東アジア
東アジアには,日本,中国や韓国などが含まれます.
東アジアの人口は現在は横ばいで,2030年ぐらいから明確に減少に転じる見込です. 残念ながら,東アジアは長期投資の対象として適していないと思います.
もちろん,人口ボーナスなんてなくとも大きく経済成長するのなら問題ないです.ですが,そのような不確実な事象に賭けなくとも,他に人口ボーナスが得られそうな地域があるのだからそちらに賭けた方が期待値高いと思います.
また,人口が減少傾向にある地域や国では,地域全体や国全体ではなくて人口増加が見られる地域や国に積極的に進出しているような個別企業に投資する方が有効だと思います.
南アジア
南アジアには,インド,バングラデシュやネパールなどが含まれます.
南アジアは(というよりほぼインドですが),2060年まで人口増加が見込まれます.2015年時点で18億人強であった人口が2060年には1.3倍の24億人強に増加する予想です.人口が多いということと人口が増加傾向である点で,南アジアは長期投資として非常に魅力的な地域だと思います.
東南アジア
東南アジアには,インドネシア,フィリピンやベトナムなどが含まれます.
東南アジアは,人口の多さという点で南アジアには見劣りしますが,人口そのものは2060年頃まで増加する予想です.長期投資の対象として,東南アジアは十分魅力的だと思います.
西アジア
西アジアには,トルコ,サウジアラビアやアラブ首長国連邦などが含まれます.
西アジアは,2015年時点で人口は2.5億人と上述の地域と比べて少ないですが,2100年まで順調に増加する見込です.2100年時点の人口は,約2倍の4.8億人になる予想です.長期投資の対象として,西アジアは十分魅力的でしょう.
中央アジア
中央アジアには,カザフスタン,ウズベキスタンやキルギスなどが含まれます.
人口も少なく人口の増加も微増の見込です.長期投資の対象としてうまみはそれほどないと思います.
アジアの国別人口動態
アジアの国々の一部の人口動態をみてみましょう.ETFで投資可能な国についてピックアップします.
日本
みなさんご存知の通り,日本はすでに人口減少に入っています.したがって,長期投資の対象として日本は適していないと思います.つまり,長期保有目的で日経225やTOPIXを買うことはかなりギャンブルだということです.
中国
中国も人口自体は多いですが,横ばいから減少に転じようとしています.人口の増加という点で,おいしい時はすでに終わってしまったものだと思います.ここから進んで中国全体を対象に長期投資を行うのはうまみはないでしょう.中国に投資するなら,個別企業を研究する必要があると思います.
インド
日本と中国は微妙でしたが,インドは魅力的です.
2015年時点のインドの人口は13億人ですが,2060年のピークでは1.2倍の16億人になる見込みです.1人あたりGDPも4000ドルでまだまだ成長過程です.長期投資の対象としてインドは非常に魅力的ですね.
インドネシア
インドネシアも魅力的です.
インドネシアの人口は2015年時点で2.5億人程度でピークの2060年頃には3.2億人に増加する見込です.インドには見劣りしますが,十分魅力的な国ですね.インドネシアは長期投資に向いている国だと思います.
フィリピン
フィリピンも長期に人口が増加する推計になっています.
2015年頃には1億人程度だった人口が,2100年には1.7倍の1.7億人に増える見込です.フィリピンも長期投資に魅力的な地域ですね.
ベトナム
最後にベトナムですが,人口は若干増加する推計になってはいるものの,1億人から1.1億人弱の範囲です.長期投資で人口ボーナスの恩恵を得ようと思っているとすると,ベトナムにはそれほど魅力はないでしょう.
アジアを対象としたETF/投資信託
アジアを対象としたETFと投資信託を表にまとめました.選定基準は私の好みです.
シンボル | 名称 | 経費率 | 国 | 取扱証券会社 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
ASHR | Deutsche X-trackers Harvest CSI 300 | 0.65% | 中国 | CSI 300 Index | |
FXI | iShares China Large-Cap ETF | 0.74% | 中国 | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | FTSE China 50 Index |
(投資信託) | i-mizuho中国株式インデックス | 0.6804% | 中国 | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | FTSE China 50 Index |
EPHE | iShares MSCI Philippines ETF | 0.64% | フィリピン | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | MSCI Philippines Investable Market Index |
VNM | VanEck Vectors Vietnam ETF | 0.63% | ベトナム | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | MVIS Vietnam Index |
EIDO | iShares MSCI Indonesia ETF | 0.63% | インドネシア | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | MSCI Indonesia Investable Market Index |
INDA | iShares MSCI India ETF | 0.71% | インド | MSCI India Total Return Index | |
INDY | iShares India 50 ETF | 0.93% | インド | 楽天証券 | Nifty 50 Index |
EPI | WisdomTree India Earnings Fund | 0.84% | インド | SBI証券,マネックス証券,楽天証券 | WisdomTree India Earnings Index |
AAXJ | iShares MSCI All Country Asia ex Japan ETF | 0.72% | アジア(日本除く) | 楽天証券 | MSCI AC Asia ex Japan Index |
前回,アメリカを対象としたETFを見た後では,経費率の高さが目に止まります.金融市場としてまだまだ発展途上でコストがかかるということでしょうか.
長期投資の対象として魅力的だった,インド,インドネシア,フィリピンについては,3つのネット証券ともに取り扱っていますね.楽天証券は他のネット証券が扱っていないINDYやAAXJを扱っています[^1].
個人的にはインドに投資するならEPIを使うのをオススメします.マネックス証券では,EPIがフリーETFの対象となっており,売買手数料の全額がキャッシュバックされます.
参考 ゼロETF(米国ETF売買手数料実質無料プログラム)|マネックス証券
まとめ
長期投資の対象として,アジア全体は魅力的な地域でしょう.アジアを国別にみると,長期投資として魅力的な国は,インド,インドネシアとフィリピンでしょう.それぞれの国をウォッチしていきたいと思います.
また,西アジアは長期投資として魅力的な地域でしたが適当なETFがないようです.新しくできることを期待します.
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