米国株の個人投資家として有名なバフェット太郎さん(@buffett_taro).控えめに言っても読者を煽るタイプのブロガーで好き嫌いが分かれると思います.
そんなバフェット太郎さんは,米国大型株の中から選んだ10種類の銘柄選び均等配分した,「バフェット太郎10種」というポートフォリオを組んで投資を実践されています.
その考え方は非常に参考になると私は考えていますが,そのポートフォリオってどんな特性があるのかいまいち理解できていません.
ということで今回は,バフェット太郎10種をバックテストすることによって,定量的にポートフォリオの特性を理解してみましょう.
コンテンツ
バフェット太郎10種と投資戦略
バフェット太郎さんは,米国個別株を10銘柄を毎月,構成比率の低い2銘柄を買い増して,均等配分になるようにリバランスする,ということを実践されています.
毎月の追加投資は約50万円のようです.すごい額ですね.
参考 2015年12月資産状況 | バフェット太郎の秘密のポートフォリオ(米国株配当再投資戦略)
バックテスト
条件と方法
バックテストは Portfolio Visualizer を用いました.garboflashさんがブログで紹介しているのを見かけて,使ってみるとすごく便利でした.米国株/ETFに投資をされる方は使ってみることをオススメします.
外部サイト 10本以上の海外ETFのポートフォリオを検証できるサイトを見つけたので紹介するよ | 関東在住福岡人のまったり投資日記
バックテストは以下の条件で行いました.赤文字は,バフェット太郎さんの投資方法とは異なるところです.
- 2008年4月から2019年8月末までのヒストリカルデータを利用1本来はもっと昔から検証したかったのですが,バフェット太郎10種に含まれるPMが2008年3月28日にMOからスピンオフされているため,それ以前のデータがありません.そのため,2008年4月からのデータを用いています.
- 均等配分になるように毎月リバランスを行う
- リバランスのコスト(売買手数料・税金)は無視
- 構成比率が低い2銘柄を買い付けることによる調整はしない
- 配当再投資を行う.ただし,ツールの仕様上,追加投資する場合は配当再投資を行わない.
比較のため3種類のポートフォリオで比較します.
- Portfolio1: バフェット太郎10種
- Portfolio2: VTI 100%
- Portfolio3: VTI 60% TLT 40%
Portfoio3は,株式・債券でよく使われている比率です.
結果1:初期投資1万ドルで運用した場合
初期投資として1万ドルでポートフォリオを作って,追加投資をしなかった場合の結果です.
特性
検証期間の各ポートフォリオの特性をみてみましょう.
ポートフォリオ | 年間リターン | リスク(標準偏差) | 最大ドローダウン | シャープレシオ | ソルティノレシオ2ソルティノレシオは超過リターンを下落したときのばらつきで割った値です.値が大きいほど,下落リスクに対してリターンが良いことを表します |
---|---|---|---|---|---|
Portfolio1 | 9.65% | 11.24% | -22.55% | 0.83 | 1.27 |
Portfolio2 | 9.6% | 15.6% | -46.56% | 0.64 | 0.92 |
Portfolio3 | 9.36% | 9.25% | -25.91% | 0.96 | 1.4 |
バフェット太郎10種はPortfolio2(VTI)と同程度のリターンを得られながら,リスクは小さく抑えられています.加えて,最大ドローダウンも半分未満に抑えられています.
バフェット太郎10種は市場平均(VTI)からうまく銘柄を選んでいるといえるでしょう.
一方で,バフェット太郎10種とPortfolio3(VTI+TLT)を比較すると,Portfolio3のリターンは若干小さいですがリスクがそれなりに小さいためリスクあたりのリターン(シャープレシオ)でみると,バフェット太郎10種はよくありません.
リスク・リターンや未来への不確実性などを総合的に判断して,宗教上の理由で株式しか投資できないのでなければ,Portfolio3のように株式と10年国債を交えたポートフォリオの方が良さそうに,私は思います.
口座残高推移(トータルリターン)
残念ながらサブプライムローン問題による下落は入ってませんが,リーマンショックによる下落幅がバフェット太郎10種(Portfolio1)では小さいことがわかります.また,2018年頭まで,バフェット太郎10種は他のポートフォリオよりトータル・リターンが高いですね.
ドローダウン
バフェット太郎10種の最大ドローダウンは小さいですが,2018年頭の下落では他のポートフォリオの倍以上のドローダウンとなっています.
それに比べて,Portfolio3は安定していますね.
配当金
バフェット太郎10種の配当の多さが目に止まります.2008年では,ポートフォリオの元金に対する配当利回りは2.5%ですが,2016年には3倍の7.5%になります.単に配当金としては魅力的に感じます.
Portfolio2では,2008年から2011年までのじりじり株価が回復していくフェーズでは配当額はほぼヨコヨコです.TLTをいれているPortfolio3では,債券が配当額を押し上げていますね.それでも,結果的にはですが,バフェット太郎10種の方が沢山の配当が得られています.
ここで注意が必要なのは,配当金は大きいですが,株価だけをみるとその分他より劣後してみえることです.
年間リターン
年間リターンをみて気づくのは,市場平均(Portfolio2)に対して勝っている年がそれほどないことがわかります(12年のうち4年).これはバフェット太郎10種の構成銘柄がディフェンシブな銘柄が占めているからだと思います.
仮に検証開始時期を2009年の底値にすると,バフェット太郎10種は他のポートフォリオにトータルリターンで負けてしまいます.つまり,相場が総悲観にくれているときに開始すると他のポートフォリオより劣後しやすいといえます.バフェット太郎10種は,リスク(リターンのバラつき)を抑えたうえでそこそこのリターンを狙うポートフォリオだということが解釈できます.
結果2: 初期投資1万ドルで毎月5000ドルの追加投資をした場合
最初に1万ドルでポートフォリオを構成し,その後毎月5000ドルの追加投資をした場合についてチェックしてみましょう.
ただし,ここで行っている追加投資とリバランスはバフェット太郎さんが実践されている方法と異なること,ツールの都合上配当再投資が行われていないことに注意してください.
口座残高の推移はこのようになりました.
バフェット太郎10種は,VTIのみからできたポートフォリオに口座残高で勝てていないことがわかります.
これは,VTIの振れ幅大きいこと(リスクが高いこと)がリターンを押し上げる効果につながったのだと思います.つまり,積立開始時に大きく下がって取り崩し時にどかっと上がるという,積立投資であるドルコスト平均法にとって都合の良い値動きをした結果です.ポートフォリオのリターンに対して追加投資額が大きいので,リーマンショックやチャイナショックなどで大きく下がったときの追加投資が功を奏しているのでしょう.特にリーマンショック時は,株式のリターンとか誤差ですね.一方で,バフェット太郎10種はリスクが小さくあまり大きく下がらないため,その後の株価回復時にどかっと増えるということがないのかな,と思います.
バフェット太郎10種のまとめ
強み
- 暴落時にポートフォリオの評価額の下落がマイルド3もちろん,保証されているわけではありません.念のため
- 配当金がどかどか入ってくる.のちに,配当金生活を目論んでいるひとに適している4ただし,最終的に配当金生活を目論んでいるだけなら,最初からこのポートフォリオにする必然性はない..
弱み
- 配当再投資による効果が目に見えてくるには時間がかかる
- 大きな下落が低減されるので,大きく下がったところでガッツリ買い増すということができない
おわりに
バフェット太郎さんのポートフォリオである,バフェット太郎10種のバックテストを通して,その特性をみてきました.
その結果,過去のデータからは,バフェット太郎10種はリスクが抑えられてそこそこのリターンが得られるポートフォリオであるといえます.もちろん,今回検証できなかった,バフェット太郎のリバランス方法を用いると,ものすごいリターンが得られるかもしれません.
あくまでも過去のデータを用いたバックテストの結果,低リスクであったということで,この先の未来も低リスクであるとは保証できません.今回は検証できていませんが,リーマンショックのような暴落時に下げ幅が小さかった理由が何で再現性があるかどうかを分析した方が良いでしょうね.もちろんご本人はされているとは思います.
個人的には,Portfolio3のような異なる資産を組み合わせたシャープレシオの高いポートフォリオに適度にレバレッジをかけたいなぁ,と思いますが.
ともあれ,相場で生き残った人すべてが勝者だと思っているので,リターンやリスクが自分にあっている投資方法でやっていければいいかなぁと思います.
コメント