積立投資: シャープレシオが同じ場合の積立投資の有効性は?

前回は,ボラティリティに高いレバレッジドファンドを想定して,積立投資が一括投資に比べて有効かどうかを調べてみました.

今回は日次ベースのシャープレシオが同じものを対象に,積立投資が一括投資に比べて有効かどうかを調べてみました.また,利益の期待値は一定で標準偏差を変えてシャープレシオを変えたものどうしを比較し,同様に積立投資が一括投資に比べて有効かどうかも調べてみました.ここでいう積立投資の有効性というのは,「トータルリターン(10年間)が不確実性小さく高いこと」です.

今回の結果をまとめると,

  • シャープレシオが同じであればボラティリティが小さいほど積立投資の有効性は薄れ,一括投資が有利
  • シャープレシオが高いほど積立投資の有効性は小さくなり,一括投資が有利

ということです.

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評価方法

前回同様,SPYの日次リターンをベースに,モンテカルロシミュレーションで10年間のリターン系列を生成します.ただ,前回と異なり,SPYの日次リターン(2000/1/1から2021/4/1)の期待値と標準偏差を求めて,正規分布に従って日次リターンを生成しました.

以下方法です.

  1. S&P500に日次リターン(2000/1/1から2021/4/1)から期待値と標準偏差を求める
    • 期待値: 0.0002697
    • 標準偏差: 0.012523
  2. 以下の場合で期待値と標準偏差を加工する
    • シャープレシオが同じ場合: 期待値と標準偏差をともに0.5倍,1.5倍にする
    • 期待値が同じで標準偏差が違う場合: 標準偏差のみ0.5倍,1.5倍にする
  3. 求めた期待値と標準偏差の正規分布に従って日次リターンを10年分(2400日分)生成.1ヶ月を営業日で20日とする.
  4. 積立方式として,毎日,1ヶ月,3ヶ月,6ヶ月とし,比較として一括投資を用いる.
    • 総投資金額は一定

積立投資 vs 一括投資: シャープレシオが同じ場合

日次ベースのシャープレシオが同じで,期待値と標準偏差の倍率を変えたもの同士を比較します.

10年間のリターン分布

まずは一括投資をした場合の10年後のトータルリターンを見てみましょう.

日次ベースのシャープレシオが同じだったとしても,ボラティリティが高いほど10年のトータルリターンの不確実性が大きいことがわかります.ギャンブルを望まないのであれば,同程度のシャープレシオであるとき,標準偏差が小さいものを選ぶと良いですね.

それでは積立てた場合と一括で投資した場合を見てみましょう.傾向は変わらないので,1倍の結果を示しています.

毎日積立(per day)と毎月積立(per month)の利益分布はほとんどかわりません.毎月積立の方が利益部分布が若干広いです.一方で一括投資するのか積立投資するのかでは大きく違います.一括投資をしたほうが利益分布が広くなっています.もちろん儲かる方向にも損する方向にも広がっていますが,トータルリターンが-50%になるのと+150%1+150%ですから原資の2.5倍ですになるのは同じ確率ですね.

同じ倍率同士で,一括投資より積立投資のトータルリターンが高かった割合(%)を表にまとめると以下のうようになりました.

per 1dayper 1monthper 3monthsper 6months
x1.027.627.6427.727.93
x0.522.3222.3322.3822.49
x1.533.2333.2433.2733.33

前回同様にボラティリティが大きいほうが積立投資が一括投資よりトータルリターンが高くなりやすいです.ただし,高々3割強の割合でしかないので,シャープレシオが高いものであればなおさら,一括投資すべきでしょう.

一括投資と積立投資の利益差

一括投資と積立投資の利益差の分布も見てみましょう.0より大きければ積立投資の方がトータルリターンが高く,0より小さければ一括投資の方がトータルリターンが高い結果です.

上で確認したように,一括投資の方がトータルリターンが高くなる確率が高いですね.

一括投資のときのトータルリターン$R_{10y}$を基準に,一括投資と積立投資の利益差の分布をみてみましょう.つまり,一括投資のトータルリターンが100%になっている場合($R_{10y}>1.0$)の利益差の分布や一括投資のトータルリターンが0以上で50%未満の場合($0\leq R_{10y} < 0.5$)の利益差などに分けてみます.

一括投資のトータルリターンが大きいほど,積立投資より一括投資の方がトータルリターンが大きくなりやすいことがわかります.積立投資が特に有効なのは一括投資のトータルリターンがマイナスになる場合ですね.投資対象のトータルリターンがマイナスになりやすいなら積立投資がマシということですが,それなら投資対象としてはずしたほうが良い気がします.

因みに,年利4%としたときのトータルリターン(10年間)の期待値は約50%ですから,$0.5 \leq R_{10y} < 1.0$と$0\leq R_{10y} < 0.5$の間くらいの分布になると思われます.したがって,年利4%くらいを期待できるものに投資しているなら,積立投資ではなくて一括投資をしたほうが良いと思います.

積立投資 vs 一括投資: 期待値が同じで標準偏差が違う場合

期待値を変えずに,標準偏差の倍率変えて比較します.

10年間のリターン分布

まずは10年間のトータルリターンを確認します.

ボラティリティが小さい方が断然有利ということが確認できますね.

同じボラティリティで,積立投資が一括投資よりトータルリターンが高くなった割合(%)はこんな感じ.

per 1dayper 1monthper 3monthsper 6months
sd x1.027.627.6427.727.93
sd x0.54.934.945.045.06
sd x1.544.7744.7644.7144.94

やはりボラティリティが小さいものの場合,積極的に積立投資をする意味はありませんね.例えば,株式が対象であれば多少積み立ての意味はありますが,債券やバランスファンドのようなボラティリティが小さいものへの積み立てはあまり意味がなく一括投資すべきでしょうね.

一括投資と積立投資の利益差

一括投資と積立投資の利益差分布も一応確認しましょう.

やはり標準偏差が低くシャープレシオが高いものの方が,積立投資の意味がないですね

おわりに

日次ベースのシャープレシオが同じものどうしと,利益の期待値は一定で標準偏差を変えてシャープレシオを変えたものどうしを比較して,積立投資が一括投資に比べて有効かどうかを調べてみました.

その結果,シャープレシオが高いものであれば積立投資をするより断然一括投資したほうが良いことが改めて確認できました.加えて同じシャープレシオでも,ボラティリティが小さい方が積み立て投資仮に一括投資するには額が大きすぎて躊躇する場合も,短い間に複数回分けて分割投資するほうが良さそうです.

積立投資が有効になるのはシャープレシオが低いものであったりボラティリティが高いものであったりする場合です.そういう投資対象は基本的に避けるべきだと思われるので,積立投資は気休めでしかないように思います.

とはいえ,日次リターンとの間には記憶がない確率分布にしたがっていることを前提としているため,それが成り立たない状況ではここでの議論は意味ありません.例えば,利益が適正レベルなのに2例えば,会社規模やビジネスとして1億の利益が適正レベルであったときに,一時的に利益が減ってかろうじて赤字をさけて100万になったとします.このとき,PERはものすごく高くなりますが一時的であるので問題ないと思います.しかし,利益成長とか考えても,PER500倍とか1000倍とかはありえないでしょうPERがものすごく高い株の場合は上がるより下がる方が確率高いでしょう.

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