【2019年7月23日】イオンディライトの臨時株主総会に行ってきたよ: カジタク不正会計問題の最終報告を受けて

2019年7月23日に行われた,イオンディライトの臨時株主総会に行ってきました.

今回の株主総会では,イオンディライトの子会社であるカジタクにおける不適切な会計処理問題の最終報告書が第三者委員会から受領したことを受け,再発防止策の報告と取締役選任の決議が行われました.

今回は,株主総会の様子とそこでの質疑内容を感想を交えながらまとめます.因みに,中間報告が出た後に行われた定時株主総会の様子は次の記事を参照ください.

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イオンディライト

イオンディライトは,イオンが親会社であり,イオングループの施設管理運営にかかわる業務を行っている総合ファシリティサービス企業です.事業セグメントは,設備管理,警備,清掃,建設施工,資材,自販機,サポートの7つのセグメントから成ります.

これまでのイオンディライトは増収増益を安定して続けている優良企業でしたが,サポート事業に含まれる「カジタク」において不適切な会計処理が発覚しました.

その後,特別調査委員会からの最終報告書をイオンディライトが受領し,それを受けて報告書と今後の対応が開示されました.詳細は以下のリンクをたどって見てください.

外部リンク 特別調査委員会の調査報告書開示および今後の対応に関するお知らせ

今回は最終報告書の受領したことにより2019年2月期決算が確定したことを受けて,5月に行われた定時株主総会で期間限定で再任された取締役に代わり,改めて取締役の選任の議決を行うために臨時株主総会が開かれたということです.

カジタクの不適切な会計処理と業績への影響

最終報告書において,カジタクの不正として認定された行為は次のとおりです.

  • 未設置物件請求による売上の水増し
  • 損益調整による架空売上の計上等
  • 証明写真機仕入先に対する仕入れの未計上等
  • 中古複写機などの仕入れの未計上
  • 新品複写機の仕入れの未計上等
  • 実態を反映しない卸資産評価等
  • その他の不正行為

不正調査対象期間(2013年度から2018年度)の累積純資産影響額はこんな感じになっています.

2013年度から2018年度の累積修正額(出典: 2019年2月期決算発表説明会資料

中間報告書段階では,1から9までの項目の-97億円が累積で影響するということでした.最終報告書では収益認識基準変更金額として-37億円,引当金計上金額として-27億円を加えた-162億円が今回の不正によって生じた損失となります.

収益認識基準変更額というのは,複写機・証明写真機等の機器販売価格に,リース期間に得られるであろう保守収入を前受けしたと認められる部分があり,それを発生主義に基づき計上したために生じたとのことです.

また,引当金は,最低売上補償額を下回った場合はカジタクが損失補てんするという過度な販売施策により,将来の損失補填額を計上したものです.

今後の対応・方向性

特別調査委員会からの提言に基づき,イオンディライトは次のような取り組みを発表しています

  • 予算実績管理,個社別の成長戦略,内部統制システムを柱とするグループガバナンス体制の強化
  • コンプライアンスに関する意識改革,グループ会社のコンプライアンス体制の整備などの再発防止策
  • 関係者の処分と経営責任の明確化

詳細は,以下を参照してください.

外部サイト イオンディライト 2019年2月期決算発表説明会資料

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質疑応答

質疑応答についてさらっとまとめておきます.関連する質問はいくつかはマージしています.

なお,質疑とその回答についてはメモと記憶をもとに書いているため,誤認している部分があるかもしれません.ご了承ください.

カジタクについて

株主
株主

カジタクの損失補填契約について,特命チームを作って契約交渉を行っているとのことだが,どのようにやっているのか?また,その効果は?

役員
役員

交渉の内容については守秘義務があるため答えられない.

特命チームは,イオンディライトとカジタクの社員がペアとなって交渉にあたっている.現段階でそれなりに効果がでており,保守的に見積もっている引当金から戻りがあると見込んでいる.

監査役・監査役会について

株主
株主

カジタクの監査役やイオンディライトグループ本体の監査役など複数いるはず.監査役はどの段階で今回の不正を認識したのか?

また,監査役に問題があるのなら,監査役に処分があるのではないか?

役員
役員

監査役会として不正を認識したのは,報告書にあるとおりの時期.

カジタクの監査役は,情報が隠蔽・改ざんされていたため,監査資料からは不正の兆候がみられなかった.

カジタクの不正に関する処分については,適切に懲戒処分を行っている(hass意訳: 監査役は処分されていないので監査役には問題ない).

質問した株主は,この回答には不満のようでした.

会計監査については私はよくわからないので,今回の不正について一般的な監査の方式で見つからないようなたぐいの不正なのかわかりません.ご存じの方がいらっしゃったら教えて欲しいです.

自動販売機事業について

株主
株主

自販機事業はビジネスモデルの転換期とのことだが,そのスピード感はどうなのか?QRコード決済など新しい決済などもでてきているが.

役員
役員

最大の課題は人手不足.従来のビジネスモデルは自販機をたくさん配置することが大事だった.しかし,人手不足により,自販機あたりの売上効率を高めることが必要になってきた.自販機の設置場所や商品の刷新などを行っている

電子決済については,WAONを活用したい.

ガバナンスについて

株主
株主

ガバナンスの強化と円滑な業務の推進にはトレードオフがあると思われる.どのような対策をおこなうのか?

役員
役員

今までは数字達成に重きをおいたガバナンスを行ってきた.例えば,子会社から出された中期計画をそのまま利用して達成できるようにガバナンスを発揮してきた.これからは,予算作成段階から子会社の実力をみながらいっしょに計画をたてるようにする.ただし,予算達成の手綱はゆるめるつもりはない.

主要5社の子会社には常勤取締役を派遣するなど行う.

取締役の人数について

株主
株主

取締役を11名から6人に減らすということだが,カジタクの問題の措置と選任されてない取締役に関係はあるのか?人数が減っても大丈夫なのか?

役員
役員

社外取締役は3名で,ガバナンスをしっかりするため,それと同数の取締役とし全体として6名の取締役とした.

カジタクの問題で懲戒処分となっている役員は2名いるが,その2人は選任していない.

執行役員の意識改革は重要だと考えている.取締役会の権限を執行役員の権限に一部移譲するとともに,取締役会ではそれをしっかり監督していく.

おわりに

今回はイオンディライトの臨時株主総会の内容についてまとめました.

株主からの質問については,他にも怒りに満ちた質問もありましたが,よくわからなかったので割愛しています.怒りのあまり要領を得ない意見や質問をするのではなく,怒っているからこそいっそう冷静に意見・質問をしたほうが建設てきだなぁ,と聞いてて思いました.

イオンディライトの株価はカジタクの不正会計問題の最終報告書の発表とその対応で若干戻りましたが,その後はまた発表前の水準まで戻ってきています.新たに行う対応が実際効果があるとともに,これまでのような増収増益傾向もどれるか,しばらく様子見でしょうね.私は期待しています(ポジショントーク).

まぁ,不正があると機関投資家は売るって言いますし,ちゃんと対応したら機関投資家が戻ってきて株価があがるんじゃないかなぁと思っています.

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