VTIの過去データを利用してつみたてNISAの節税効果を検証してみた

前回は,現行NISAとつみたてNISAのそれぞれにおいて,長期積立投資をしたときにどれだけ節税効果があるかを定量的にシミュレーションしました.

NISAとつみたてNISAはどちらがお得?長期投資を想定して簡単にシミュレーションしてみた
来年2018年からはじまる「つみたてNISA」の口座開設予約が今月から各証券会社ではじまりました.つみたてNISAは長期投資を想定した制度設計になっており,最長20年間が非課税になっています.しかし,年間40万円と少額すぎるとの指摘もあ...

しかし,VTIの年利が6%強だからといって,毎年6%で株価が増えているわけではありません.前年比マイナスになることもあれば,大きくプラスになる年もあります.その平均年利6%は,設定時の株価と現在の株価を年利に換算したものなのです.

とすると,前回のシミュレーションは実際は全然うまくいかないんじゃなのって気になりますよね.私としてもかなり楽観的なシミュレーションだと思っています.ということで,今回はVTIのヒストリカルデータからつみたてNISAを検証していきたいと思います.

スポンサーリンク

VTIの株価の推移

今回も楽天・全米株式インデックス・ファンド(楽天VTIと勝手に呼ぶ)をつみたてNISAで積み立てることを考えます.

まずは,2001/6/15から2017/10/6までの VTI の株価の動きと配当です.今回用いたデータはYahoo!Financeで取得しました.

配当をみると,サブプライムローン問題(2007年)やリーマンショック(2008年)あたりでも,それほど大きく配当が減っていませんね.配当は偉大ですね.

楽天VTIは円換算したVTIだとみなせるので,株価の変化を円建でみてみます.円建への変換に用いたUSDJPYのヒストリカルデータはStooqのものを利用しました1.株価を円建でみると違った景色がみえてきます.

さて,円建のVTIの相場の局面を大まかに整理しましょう.

  • 下落局面1: 2001年から2003年
  • 上昇局面1: 2003年から2007年
  • 下落局面2: 2007年から2009年
  • レンジ局面: 2009年から2012年
  • 上昇局面2: 2012年から現在

これらの局面に注目して運用額の変化を考えてみます.

想定

検証するうえで,次のことを想定します.

  • 毎月33,000円を楽天VTIをつみたてNISAで積み立てる
    • 楽天VTIの価格はVTIの円建価格と等しいとする.信託報酬分は無視する
    • 楽天VTIの買付けは月初の寄付価格
    • 税引き後は,月末の終値価格で計算
  • ヒストリカルデータは17年分しかないので,すべての積立はつみたてNISAの非課税期間に含まれます.
  • 配当は月末の終値で再投資
    • ただし,配当の課税は無視します.
  • 課税は楽天VTIの売却時のみかかるとします.楽天VTIは分配金を極力出さない方針のようです.嬉しい限りです.

結果

まずは,税引き後運用額をみてみたいと思います.税引き後の運用額はその月の末に仮に売却した場合の税引き後売却額です.元本割れしているときに,売却すると課税されません.

下落局面1(2001-2003)では,ほとんどずっと元本割れの状況です.上昇局面1(2003-2007)では,徐々に含み損が解消されどんどん利益が積み上がっています.2007年のピークに,売却すると25万円弱の節税効果が得られたでしょう.しかし,下落局面2(2007年から2009年)になると,徐々に含み益が減って含み損になっていきます.最大で含み損が120万程度にまでなります.レンジ局面(2009-2012)では,徐々に含み損が減っていくもののこの3年間は報われていません.上昇局面2(2012-2017)にはいると,アベノミクスを契機にぐんぐん運用額がのびてきてます.2017年10月現在では,つみたてNISA口座の税引き後運用額は1700万弱で,そのときの節税額は180万強になる見込みです.ここ数年でようやく報われ非課税で,あるうまみがでてくるということですね.

次に,取得株数2を,積立購入した分と配当再投資で増えたものとをわけて見てみましょう.

最初の10年間は配当再投資による株数の寄与は少ないですが,年数を経ることによって着実に配当が効いているのがわかります.2017年10月時点では,取得株数の16%程度が配当によるものです.配当再投資の力を確認できます.

雑感

  • 下落相場始まりで積立を開始するという状況でしたので,10年近く投資の旨味が得られない状況が続いていました.特にリーマンショックあたりは,含み損が元本の半分近くになっています.
    • 最後に報われるためには根気よく積み立て続けないといけません.10年間報われない中で果たして継続的に積み立てられるでしょうか.
    • いくら最後には報われると思っていても,10年間も耐えるのはなかなか大変だと思います.
    • 継続するためには,精神的にほっておける程度の額である必要があると思います.そういう意味では,つみたてNISAの年間40万円,月33,333円という枠はちょうどいいように思います
  • 配当再投資の力に改めてビックリです.積立当初は配当再投資の寄与は微々たるものですが,運用額が大きくなると配当再投資目の寄与度が目に見えて高くなっています.配当が心の支えになると言われますが,まさにそのとおりですね.
  • 楽天VTIは分配金を極力ださないということなので,配当再投資の効果の恩恵が得られると思います.ということは,楽天VTIを積み立てる場合につみたてNISAと課税口座の違いは売却時の課税のみです.非課税のメリットなくても,楽天VTIはとても魅力的な投資信託だと思います.

  1. VTIを円建に変えるにあたり,VTIの月足の始値と終値とUSDJPYの月足の始値と終値をそれぞれ掛けて算出しています. 
  2. 投資信託なので口数といったほうがいいかもしれませんが. 

コメント