日本の株式市場な主要な株式指数のひとつである,日経平均株価にもレバレッジドETF (LETF) があります.日次の売買代金ランキングの上位に度々現れるほど人気のあるETFです.
活発に売買されていることから,日経平均のLETFは短期目的で売買されているように推察できますが,長期投資のポートフォリオの一部として組み込んでみたらどうでしょうか.コスト負けせずにレバレッジをかけていない元の指数に対して十分に大きなリターンが得られるのでしょうか.
今回はそんな疑問を解決すべく,2018年3月26日現在,東証に上場している日経平均株価のLETFについて,その実質コストと期待リターンを調べてみました.なお,今回の対象はブル型のLETFです.
日経平均のレバレッジドETF
まずは日経平均株価のLETFを簡単に表にまとめます.いずれのLETFも,日経平均株価の日次リターンの2倍に連動するLETFです.
銘柄コード | 名称 | 経費率 (%) |
---|---|---|
1358 | 上場インデックス日経レバレッジ指数 | 0.7075 |
1458 | 楽天 ETF-日経レバレッジ指数連動型 | 0.35 |
1570 | (NEXT FUNDS)日経平均レバレッジ上場投信 | 0.80 |
1579 | 日経平均ブル2倍上場投信 | 0.75 |
経費率をみると,楽天の1458は他のLETFと比べて半分以下の0.35%で,他のLETFに比べ大きく水をあけています.やはり短期売買でLETFが利用されていることを考えると,経費率を下げる方向への圧力がかかっていないようにみえます.
パフォーマンス
次に各LETFと比較のために日経平均トータルリターン・インデックスのパフォーマンスを確認しましょう.なお,公平な比較のため,上場が最も最近である1458の上場日(2015年7月15日)からのデータを用いています.
2015年8月にチャイナショックが起こっていることもあり,調査期間のほとんどで元の指数(日経平均トータルリターン・インデックス)に比べてLETFは劣後しています.ただ,トータルリターンはいずれの指数・LETFともに10%程度です.
日経平均トータルリターン・インデックスの日次リターンの2倍(赤線)と比べ,コストがかかる分,いずれのLETFも下振れていることがわかります.わずかですが,楽天の1458が他のLETFよりパフォーマンスが良いですね.
ベンチマークからの乖離
それでは日経平均トータル・リターンインデックスの日次リターンの2倍に連動する仮想指数をベンチマークとし,それとの乖離幅を各LETFについて見ていきましょう.
乖離幅の密度分布と累積密度関数を順に載せます.
累積密度関数をみると,シンプレクスの1579が他のLETFに比べ乖離幅が小さいことがわかります.シンプレクスの運用が他社と比べてうまいということがいえそうです.
逆に日興の1358は外れ値がいくつか見られており,運用の信頼感にかけるように思います.
統計量をまとめると次の表のようになります.
銘柄コード | 平均値 | 中央値 | 標準偏差 | 最小値 | 最大値 |
---|---|---|---|---|---|
1358 | -0.0000727 | -0.0001237 | 0.00352042 | -0.0338727 | 0.029246 |
1458 | -0.0000546 | -0.0000606 | 0.0023684 | -0.0109224 | 0.01204332 |
1570 | -0.0000801 | -0.0001025 | 0.00215403 | -0.0114312 | 0.01047056 |
1579 | -0.0000648 | -0.0001531 | 0.00197452 | -0.0078472 | 0.01051669 |
平均値が1日あたりの実質コストを表しています.
経費率が小さいということで1458が実質コスト(平均)がこれらの中で最も小さいことがわかります.一方で,1579は経費率は高いものの運用の旨さ(下方乖離の抑制と標準偏差の小ささ)によって,実質コストは少なめになっています.
期待リターン
最後に,日経平均トータル・リターンインデックスの年間平均リターンに対して期待できるLETFの年間平均リターンを見てみましょう.なお,1年の営業日数を250日として,元指数の日次リターンに実質コストを引いたもの日次リターンとして計算しています.
1458が他のLETFと比べて年間リターンがわずかに大きくなっています.実質コストが小さいので当たり前ですが.
ただ,日経平均トータルリターン・インデックスの年利が2%程度しか期待できないのであれば,LETFを使う意味はないといえるでしょう.それを上回るのであれば,LETFを使うことで2倍にはならないもののリターンを上乗せできます.
日経平均プロフィルによると,直近5年間の平均年利は19.07%ですので,LETFを使うことで大きなリターンが得られていたといえるでしょう.
参考 日経平均トータルリターン・インデックス | 日経平均プロフィル
より長期のデータがなかったので,「みんなのインデックス」から日経平均株価(配当なし)のリターンで代用すると,15年間の平均リターンは6.7%なので,その頃から日経平均のLETFがあったとしても十分報われていることになります.これからも同程度のリターンが得られると信じれるなら日経平均のLETFをポートフォリオの一部に利用するのも良いかもしれません.
因みに,20年間の平均リターンは1.4%,30年間の平均リターンは-0.4%です.如何に日本のバブルが株価を歪めていたのかがわかりますね.
おわりに
今回は日経平均株価のレバレッジドETFについて実質コストとそれを加味した期待リターンについて見てきました.
実質コストをみると楽天の1458が最も小さく,長期投資に利用するなら適していると言えます.さらに,楽天証券で1458はフリーETFとして指定されているため,売買手数料が無料で取引できます.
次点ではシンプレクスの1579が乖離幅が小さく,結果として実質コストが低めになっていました.
とはいえ,日経平均LETFをそれ単体で長期投資に使うにはボラティリティが大きすぎるでしょう.そのため,ポートフォリオの一部に入れ込む形になると思いますが,効果的かつ長期的にシャープ・レシオを高くできるようなETFは国内にはなさそうです.米国株LETFでいうとSPXLに対するTMFのようなETFがあればいいのですが.もちろん,日本はマイナス金利政策なので,債券LETFがあったとしてもコスト負けするはずなので不適当だと思います.
国際分散ということを考えると,管理としては少し煩雑になりますが,米国株LETFを使ったポートフォリオと組合せて考えると良いかもしれません.しらんけど(´ー`)
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