資産運用を考えるとき,一番の魅力は複利でしょう.複利の力で試算が大きく増加することが期待できます.
そこで,初回にまとまった資金で運用開始し,毎年追加資金として積み上げながら運用する状況を例に,実現可能性の観点から資産運用の目標額と運用利回りを考えてみようと思います.
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複利運用
100万円を年間利回り(年利)10%の単利で運用すると,1年後では110万円.2年後は120万円,3年後には130万になります.一方で,複利で運用すると,1年後は110万円.2年後は121万円,3年後では,132万円になります.さらに時間を味方につけることにより,複利で運用すると指数関数的に資産を増やすことができます(後述するとおり,複利にももちろんデメリットがあります).
ここで,資産を複利で運用する際の初期投資額を$c$,年間利回りを$r$とすると,1年後は,$c\cdot(1+r)$になります.2年後は,$c\cdot(1+r)^2$となります.さらに,$n$年後の運用額は次式で求められます.
\[
c\cdot\left(1+r\right)^n
\]
もともと資金のある方は別ですが,私みたいに初期投資額としてどんと資金を用意できず,サラリーの余剰金を追加投資して運用する場合もあるでしょう.
毎年の積立額を$x$として,追加投資は年初に行うと仮定すると,$n$年後の資産は次式になります.
\[
c\cdot\left(1+r\right)^n + \sum_{i=1}^{n-1}x\cdot(1+r)^{n-i}
\]
捕らぬ狸の皮算用ですが,上の2つの式を使ってざっくりと資産がいくらになるか計算します.
複利運用シミュレーション
前提
シミュレーションするにあたって,以下のような設定を考えます.
- 初期投資額は,100万円と400万円を想定
- 年利は6%,10%,20%を想定
- それぞれ,S&P500の平均利回り, なんとなく目指したい利回り,スーパー投資家の利回りとして想定
- 積立てる追加投資額は50万円と100万円を想定
- 運用年数は,セミリタイアやリタイヤ時を想定して,20年から30年を想定(30歳基準)
初期投資のみ
初期投資100万円
グラフの縦軸は対数表示ですので注意してください.
初期投資100万円で,年利6%で運用すると,20年で3倍強です.仮にスーパー投資家だったとして,年利20%で運用できたとすると,25年で,1億弱になります.スーパー投資家なら,セミリタイアできそうです.
初期投資400万円
初期投資を400万円に増やしてみると,金額ベースでみると,最初に大きな額を用意できると非常に有利であることがわかります.種銭が大きいほど, 短期間で億り人を目指せそうです.つまりは,少額を投資によってどんどん膨らませていくより,本業で稼いだお金で種銭を大きくすることが重要かなと思います.
初期投資に加え毎年一定額を追加投資
ということで,次に初期投資に加えて,毎年一定額を追加投資をして種銭を大きくしていく場合について考えます.なお,毎月追加投資をすることも考えられますが,実際投資する際に毎年の利回りを計算するのがめんどくさくなるので,年初に追加することとしています.
追加投資50万円/年 (初期投資100万円)
初期投資として100万円を投資し,毎年50万円ずつ追加投資すると,年利6%運用で,20年で2000万強になります.元本に対しては2倍程度です.年利10%運用では,元本に対して3.5倍弱の3500万円になっています.年利10%運用では,リタイヤ時には,億り人になっている計算です.スーパー投資家なら20年で億り人です.
追加投資50万円/年(初期投資400万円)
初期投資額を400万円に増やすと,100万円の初期投資の場合より,20年目で1.5倍程度になっています.金額ベースではなかなかの金額です.スーパー投資家なら,15年程度で億り人になります.
追加投資100万円/年(初期投資400万円)
追加投資を50万円/年から100万円/年にしたらどうでしょうか.
年利6%でもリタイヤ時(30年間)に億り人になることができています.元本にたいしては3倍強です.年利10%の運用では,20年間の運用でセミリタイヤが見えてきます.
複利運用には注意も
以上のように,複利は資産を増やす上で非常に魅力的ですが,もちろんデメリットもあります.複利は運用成績がプラスであれば資産を大きく増やせますが,マイナスであれば資産が大きく減ります.この複利の負の影響をみるためにざっくりとシミュレーションしてみます.
年利$r$で運用している際に,5年に1度運用に失敗して$-r$で損失することを考えます.このとき,初期投資のみの複利の式は,次式のように書くことができます(厳密には違いますが,ざっくり近似です).
\[
c\cdot\left(1+r\right)^\frac{4n}{5}\cdot(1-r)^\frac{n}{5}
\]
また,毎年追加投資する際の複利の式は次式になります.
\[
c\cdot\left(1+r\right)^\frac{4n}{5}\cdot(1-r)^\frac{n}{5} + \sum_{i=1}^{n-1}x\cdot(1+r)^\frac{4(n-i)}{5}\cdot(1-r)^\frac{n}{5}
\]
この式を用いて,シミュレーションしてみます.
初期投資のみ
初期投資に400万円を投資し複利運用した場合,運用にマイナスが出ない場合と比べて,思いの外少なくなっています.30年運用時点で,年利6%の場合で半分に,年利10%の場合で役3分の1になっています.複利で運用すると,運用成績がマイナスになるとそれも増幅されます.
初期投資に加え毎年一定額を追加投資
100万円を毎年追加投資をした場合もみてみます.
この場合でもちょっと物足りない結果になっています.年利6%の場合で30年運用しても元本の倍にはなっていません.もちろん,普通預金よりは断然良いですが物足りません.
複利で運用する際には,如何に毎年の運用成績が大きなマイナスにならないよう注意することが必要でしょう.
まとめ
- 億り人になってセミリタイアを目指すなら,初期投資400万円で毎年100万円の追加投資で年利10%運用で実現できそう.年利6%(インデックス運用を想定)でも,リタイヤ後には億り人になれそう
- ただし,複利で運用する場合には,特に運用が大きなマイナスにならないように注意が必要
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